研究課題
抗体分子を組換えタンパク質として生産する場合,多数のジスルフィド架橋を正しく導入することが技術的に大きな課題とされている。本年度研究では,高温条件下でのタンパク質リフォールディング技術を確立するために,高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)であるTthA0610を触媒として,昨年度に作成した耐熱性緑色蛍光タンパク質(superfolder GFP)に2組のSS架橋を導入したsfGFP-2SSを蛍光プローブ基質として用いて,サーマルサイクラーを用いた高温リフォールディング技術であるPTR(Protein Thermal Refolding)法を検討した。PTRとは,高温と低温の温度サイクルにより変性タンパク質を正しい構造へと導くことを意図しており,経時的にリフォールディング過程を測定できる変性sfGFP-2SSを基質にすることで温度プログラムの最適化を行った。ニッケル担体カラムで精製したsfGFP-2SSをグアニジン塩酸塩とDTT存在下で還元的に変性させた後,過酸化水素を用いて誤ったSS架橋を導入して蛍光を完全に消失させた。この酸化処理によりsfGFP-2SSは自己リフォールディング能を消失してPDIへの依存度が高い基質が得られた。恒温槽での一定温度下での反応では,TthA0610によるリフォールディング反応は50℃まで有効で,変性sfGFP-2SSの蛍光回復が促進された。つぎにサーマルサイクラーを用いてPTRの温度条件を検討した。高温側の温度を70℃からスタートさせ,徐々に高温側の温度を下げてサイクルを繰り返すことで,45サイクルで顕著な蛍光回復が観測された。酵素量,グルタチオン比を最適化することでリフォールディング効率をさらに改善した。SS架橋の架け替えによるリフォールディングはタンパク質の立体構造形成に重要であり,本発明によりsfGFP以外のタンパク質の高温リフォールディングへの応用も期待できる。
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