研究課題/領域番号 |
15K14698
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
阿部 文快 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30360746)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 深海性細菌ペプチド輸送体 / アフィニティー精製 / 大腸菌トリガーファクター |
研究実績の概要 |
昨年度までに、深海性好圧性細菌Shewanella violacea DSS12株、Shewanella benthica DB6705株およびColwellia piezophila Y233GT株のゲノムDNAを鋳型として、各ペプチド輸送体遺伝子のクローニングを行った。S. violaceaに4個、S. benthicaに1個、およびC. piezophilaに2個のペプチド輸送体遺伝子が見いだされたので、それら輸送体を6xHisタグによるアフィニティー精製するため、大腸菌C43株に発現させた。なお、発現にはpCold GSTプラスミドを用い、各輸送体タンパク質のN末端にGSTを融合することで可溶化の向上を図った。その結果、界面活性剤ドデシルマルトシド(DDM)で処理した試料は260,000xgの超遠心を行った後にも上清に回収され、可溶化されたことがわかった。精製条件を検討することで、いずれの輸送体もSDS-PAGEによりほぼ単一バンドとして回収された。次に、それらが立体構造を維持しているかどうか確かめるため、Docusateを電荷運搬体としたNative PAGEを行った。その結果、いずれも輸送体もスメアなバンドとして泳動され、高次構造が崩壊していることがわかった。そこで次に、GSTを大腸菌シャペロンであるTrigger factor (TF) に換え、C43株において各輸送体の発現と精製を試みた。SDS-PAGEにより単一バンドとして精製されたためNative PAGEを行ったところ、いずれの輸送体も明瞭なバンドとして確認され、単量体または2量体として精製されていることがわかった。すなわち、大腸菌のTFがペプチド輸送体の高次構造維持に極めて効果的であることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペプチド輸送体のように多数の膜貫通領域を持つタンパク質の精製は極めて困難である。GSTの融合とホスト大腸菌としてC43株用いることで可溶化には成功したものの、立体構造の維持が大きな課題だった。本年度、大腸菌TFを用いたことでこの問題を克服できた意義は大きい。
|
今後の研究の推進方策 |
いずれの輸送体も単量体または2量体として立体構造が維持されたまま精製されたので、今後はそれらを人工脂質膜に再構成し、ペプチド輸送活性を測定する予定である。人工脂質膜への再構成は一般に市販の大腸菌精製脂質が用いられているが、S. violaceaとS.benthicaは細胞膜に多価不飽和脂肪酸であるEPAを含む。よって、それらの培養菌体から精製した脂質を用いるのが適切かもしれない。C. piezophilaはEPAを含まないが大腸菌とは単価不飽和脂肪酸の割合が大きく異なるため、やはり培養菌体から脂質精製が望ましい。ペプチド輸送活性の測定には、3H標識した合成ペプチド、あるいはβ-Ala-Lys (AMCA)という蛍光ペプチドを用いる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は高圧培養容器を購入予定だったが、ペプチド輸送体の脂質膜再構成には至らなかったため、次年度の購入とした。また、界面活性剤については今年度の使用量が少なかったため、次年度の購入とした。
|
次年度使用額の使用計画 |
高圧培養容器を購入し、高圧下におけるペプチド輸送体の活性測定を行う。また、各種界面活性剤を多数購入予定である。
|