研究課題
「ストレス顆粒」は、ストレス刺激に応答して一過性に形成される細胞質内の構造体であり、この顆粒の形成が細胞のストレス適応機構として重要な役割を担っている。しかし、ストレス顆粒が形質膜を持たないことから生化学的な単離や精製が困難であるため、形成や制御に働く全構成因子らは未だ分かっていない。本研究では、生細胞から、① 蛍光融合タンパク質をプローブ(バイオイメージング)として、② 先端口径が約 50 nmのナノピペット技術(ナノテクノロジー)を組み合わせることで、ストレス顆粒をナノ環境(生細胞)からミクロ環境(チューブ)へ単離・精製することを目的とした。本年度は、タンパク質アルギニンメチル化酵素 PRMT1の二量体の蛍光シグナルが、ストレス刺激によって形成された細胞内顆粒に局在することが認められた。この結果から、「ストレス顆粒」の場所を特定することが可能になり、ナノピペットを用いた顆粒の単離を進めている。
2: おおむね順調に進展している
細胞内100-200 nmの構造体であるストレス顆粒は、膜構造を持たないことやその形成が動的かつ可逆的であるため、細胞から生化学的実験手法を用いた単離や精製は極めて困難である。本研究では細胞内で形成されるストレス顆粒に局在する蛍光タンパク質をターゲットとしてナノピペットを用いて選択なサンプリング技術の構築を目指す。現在まで、タンパク質アルギニンメチル化酵素であるPRMT1二量体が、酸化ストレスによってストレス顆粒に局在を示すことから、既知のマーカータンパク質と合わせて細胞内ストレス顆粒の正確な場所が特定でき、ナノピペットによる顆粒の単離が可能であると判断する。
平成27度の結果を受け、平成28度は、ナノピペットを用いて細胞内で形成されるストレス顆粒の単離と精製を試みる。また、単一細胞から単離後のストレス顆粒を用いて、それらを構成している本質(mRNA・タンパク質・生体低分子)の解析を行い、細胞におけるストレス応答機構とストレス顆粒の役割の解明を目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
Journal of Molecular Biology
巻: 428 ページ: 1197-1208
10.1016/j.jmb.2016.02.007
Science Advances
巻: 1 ページ: e1500615
10.1126/sciadv.1500615