本研究では発酵熱生成の機構や意義を明らかにするとともに、発酵熱を発電に利用する方法の開発を目的としている。これまでの研究では藍葉の発酵過程における発酵熱生成を検討し、この発熱がAspergillus oryzae をはじめとする糸状菌によって引き起こされること、細菌は発熱にはほとんど関与していないことなどを明らかにした。本年度はまず発酵熱生成が、藍葉から単離したA. oryzaeに特有の性質によるものか、また藍葉成分の分解過程に特有の現象であるかを明らかにするために、希釈したLB培地をWood chip に染み込ませた培地に、遺伝子操作によく用いられるA. oryzae RIB40ku70pyrG 破壊株を植菌し、その際の温度上昇を検討した。その結果、同株および藍葉から単離したA. oryzaeともに発酵熱生成を行うことが認められ、発酵熱の生成が藍葉のA. oryzae および藍葉成分に特有の現象ではないことが示唆された。A. oryzae の発酵熱生成が、呼吸鎖での電子伝達がATP生成と脱共役して起こる可能性を考え、A. oryzaeに脱共役の要因となる遺伝子を検索したところ、Alternative oxidase (AOX)ホモログの存在を認めた。そこでAOX阻害剤であるサリチルヒドロキサム酸を添加し培養したところ、阻害剤非存在下に比して温度上昇の遅延が認められた。しかしリアルタイムPCRの結果では菌体の生育の抑制も認められたため、AOXが発酵熱生成に関与するかどうかについての結論は得られなかった。本年度の研究ではまた培地に竹チップを加えることにより温度上昇が促進されることを見出し、温度上昇には培地の物理的形状が重要であることを明らかにした。また藍葉の発酵熱によりスターリングモーターの運転が可能であることを示した。
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