研究課題/領域番号 |
15K14712
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
松原 守 京都学園大学, バイオ環境学部, 教授 (90288481)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミリストイル化 / 脂質修飾 / シグナル伝達 / 脱ミリストイル化 / 酵素 / クリックケミストリー |
研究実績の概要 |
タンパク質のミリストイル化は、これまで不可逆な脂質修飾と考えられておりミリストイル基をはずす脱ミリストイル化酵素は発見されていない。ミリストイル化タンパク質の多くは細胞内シグナル伝達系を担っている重要なものが多く、更に細胞のがん化、ウイルス感染、寄生虫感染などに深くかかわっている。従って、ミリストイル化タンパク質の制御に関わる脱ミリストイル化酵素を明らかにすることは非常に意義のあることである。 本研究では、脱ミリストイル化酵素を精製、同定し、その酵素学的性質、細胞内におけるミリストイル化の可逆的メカニズムを明らかにする。さらに、脱ミリストイル化酵素の脱ミリストイル化活性を利用した各種疾患における治療薬の開発についての知見を得る。 本年度は、昨年開発した脱ミリストイル化活性を検出するアッセイ系とは別の非常に感度の良いアッセイ系の開発を試みた。具体的には、ミリストイル基にビオチン化ラベルをつけることによってミリストイル化されたタンパク質とされていないタンパク質を区別するというものである。ラベル化したミリストイル化タンパク質の作製にはクリックケミストリーという手法を用いて選択的にビオチン化ラベルさせたミリストイル化タンパク質を精製することができた。もし脱ミリストイル化酵素活性を含むフラクションがあればこのラベル化されたタンパク質からラベル化されたミリストイル基が除去されるので、結果として脱ミリストイル化酵素活性を測定することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は脱ミリストイル化酵素を検出するアッセイ系を用いて脱ミリストイル化酵素を様々な細胞可溶化液から検出する予定であったが、昨年度作製したアッセイ系ではNative Pageという電気泳動を用いるので時間がかかってしまうことが懸念された。また感度的にも悪いので、新たに感度の良い化学発光で検出できるラベル化されたミリストイル化タンパク質を用いることにした。そのため脱ミリストイル化酵素の活性検出実験に至っておらずやや遅れている。しかし、本年度でほぼ目的にアッセイ系はできたので今後脱ミリストイル化酵素活性のアッセイを積極的に行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
これまで構築した脱ミリストイル化酵素のアッセイ系を用いて脱ミリストイル化酵素活性のスクリーニングを行う。 ラット脳画分様々な培養細胞の細胞抽出液を用いて脱ミリストイル化活性があるかどうかを検討する。活性が見られた画分においては硫安沈殿やイオン交換カラム、ゲル濾過カラムなどを用いて精製する。 今までの予備的な実験からは酵素活性にはATPが必要であるということなので、実際にATP依存性やそれ以外の酵素活性を安定にする因子についても考察する。 電気泳動で分離した脱ミリストイル化酵素については、プロテオーム解析によってそのタンパク質の実体について明らかにする。得られたタンパク質の配列情報をもとにヒトホモログやタンパク質のドメイン構造を明らかにし、更に機能構造を予測する。最終的には構造解析まで持っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の消耗品費でわずかであるが差額が生じてしまった。ただ約10,000円なのでほぼ予定通りであるといってよい。
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次年度使用額の使用計画 |
差額の生じた分は物品費に使用する予定である。
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