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2015 年度 実施状況報告書

植物成長促進化合物PPGの機能発現機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K14714
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

中野 雄司  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (30281653)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードケミカルバイオロジー / 細胞分裂 / 植物ホルモン / 植物バイオマス / 葉伸長 / 枝 / 側根
研究実績の概要

植物の形態変化を指標として化合物探索を行う植物ケミカルバイオロジー研究を遂行する過程で、植物の葉・茎・根について、形態を異常にすることなく、成長を促進させる新規化合物PPGを発見した。PPGは、植物への適用の報告例は全く無い人工合成化合物であり、動物や微生物での生理作用ターゲット等の分子メカニズムも明らかになっていない。植物成長制御を行う生理活性化合物としては、植物ホルモン類が知られるが、PPGの化学構造は、既知の天然および合成植物ホルモンのいずれとも全く異なっている。本申請は、分子生物学手法、生化学的手法などによってPPGの植物成長における分子機構を明らかにすることにより、植物の未知の成長制御システムを明らかにすると共に、植物バイオマスの増産・食糧増産に向けた新しい基盤技術を開発することを目指し、開始した。
平成27年度は、PPGと細胞伸長や細胞分裂との関わりについて、主にロゼッタ葉の表皮細胞形態の詳細な解析を行った。その結果、PPGは、表皮の細胞伸長には影響がなく、細胞数を促進していた。また、細胞分裂期に発現応答するCYCB1遺伝子のプロモーターGUS遺伝子を用いた解析によって、このCYC遺伝子発現をPPGが活性化していることも明らかとなった。これらの結果は、PPGが細胞分裂を活性化していることを示唆すると考えられた。細胞分裂関連遺伝子の高発現化などによって、植物葉の分裂を活性化した場合、植物葉の全体形態は逆に小さくなる傾向があることが知られている。このPPGの場合は、分裂を促進したうえで、植物葉の全体が拡大しており、植物葉器官成長の未知の分子機構を刺激することによって、生理機能が発現している可能性を示唆すると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成27年度の成果は、PPGが、細胞分裂を活性化する機能を持つことを示唆すると考えられた。細胞分裂関連遺伝子の高発現化などによって、植物葉の分裂を活性化した場合、植物葉の全体形態は逆に小さくなる傾向があることが知られている。このPPGの場合は、分裂を促進したうえで、植物葉の全体が拡大しており、植物葉器官成長の未知の分子機構を刺激することによって、生理機能が発現している可能性を示唆すると考えられた。PPGの作用機作を知ることによって、植物成長の新しい制御機構を知ることが出来る可能性を示していると考えられ、非常に重要な進展が得られたと考えられた。

今後の研究の推進方策

PPGの生理作用は、PPGのターゲットタンパク質への結合による活性化、もしくは阻害、のどちらかによって生じると考察される。PPGの生理作用の特異性より、このPPGターゲットタンパク質の同定は、植物成長の新たなメカニズムを明らかにする上において非常に重要であると考えられる。平成27年度は、光官能基を融合させたアガロースビーズにPPGが強固に結合したケミカルビーズ(PPGビーズ)の作製を開始した。このPPGビーズに結合するアラビドプシスのタンパク質群を、ビーズ画分に捕捉する実験条件についての検討を進める。平成28年度は、さらに特異性の高い結合タンパク質の探索を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

物品費として申請した分子生物学試薬について、平成27年度は計画よりも若干額少量で、成果が得られたため。

次年度使用額の使用計画

PPG応答性遺伝子の解析など、分子生物学実験を平成28年度も進めることによって、使用する予定としている。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 産業財産権 (4件) (うち外国 4件)

  • [雑誌論文] 'Formation and dissociation of BSS1 protein complex regulates plant development via brassinosteroid signaling.2015

    • 著者名/発表者名
      Shimada, S., Komatsu, T., Yamagami, A., Nakazawa, M., Matsui, M., Kawaide, H., Natsume, M., Osada, H., Asami, T., Nakano, T.
    • 雑誌名

      Plant Cell

      巻: 27 ページ: 375-90

    • DOI

      10.1105/tpc.114.131508

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] YCZ-18 Is a New Brassinosteroid Biosynthesis Inhibitor.2015

    • 著者名/発表者名
      Oh, K., Matsumoto, T., Yamagami, A., Ogawa, A., Yamada, K., Suzuki, R., Sawada, T., Fujioka, S., Yoshizawa, Y., Nakano, T.
    • 雑誌名

      PLOS One

      巻: March 20 ページ: 1-20

    • DOI

      DOI:10.1371/journal.pone.0120812

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Fenarimol, a Pyrimidine-Type Fungicide, Inhibits Brassinosteroid Biosynthesis.2015

    • 著者名/発表者名
      Oh, K., Matsumoto, T., Yamagami, A., Hoshi, T., Nakano, T., Yoshizawa, Y.
    • 雑誌名

      Int. J. Mol. Sci.

      巻: 16 ページ: 1-5

    • DOI

      DOI:10.3390/ijms160817273

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ブラシノステロイド情報伝達タンパク質BSS1の「集合と拡散」による植物草丈制御機構:植物ケミカルバイオロジーが明らかにした新たなタンパク質のダイナミクス2015

    • 著者名/発表者名
      中野 雄司
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 53 ページ: 734-736

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 植物内の「対話」を探る-植物ホルモンブラシノステロイドを解明 農作物の収量アップをめざして2015

    • 著者名/発表者名
      中野 雄司
    • 雑誌名

      JST news

      巻: 9月号 ページ: 8-11

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 新規植物カルス誘導化合物FPXと新規植物成長促進化合物PPGの単離と機能解析2015

    • 著者名/発表者名
      中野 雄司
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会 第88回日本生化学会大会 合同大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2015-12-05 – 2015-12-10
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 葉面積拡大促進因子BIL8のブラシノステロイド情報伝達経路における機能解析2015

    • 著者名/発表者名
      山上 あゆみ
    • 学会等名
      植物化学調節学会第50回大会
    • 発表場所
      東京大学(東京都・文京区)
    • 年月日
      2015-10-20 – 2015-10-23
  • [学会発表] 新規植物成長促進化合物PPGの生理作用解析とターゲットタンパク質の探索2015

    • 著者名/発表者名
      田中 翔太
    • 学会等名
      植物化学調節学会第50回大会
    • 発表場所
      東京大学(東京都・文京区)
    • 年月日
      2015-10-20 – 2015-10-23
  • [学会発表] BIL1/BZR1の核局在を促進する新規ブラシノステロイド情報伝達因子BIL7の機能解析2015

    • 著者名/発表者名
      宮地 朋子
    • 学会等名
      植物化学調節学会第50回大会
    • 発表場所
      東京大学(東京都・文京区)
    • 年月日
      2015-10-20 – 2015-10-23
  • [学会発表] 植物成長促進化合物PPG及び植物カルス誘導剤FPXのケミカルバイオロジー解析2015

    • 著者名/発表者名
      田中 翔太
    • 学会等名
      日本農芸化学会関東支部2015年度支部大会
    • 発表場所
      東京大学(東京都・文京区)
    • 年月日
      2015-09-25 – 2015-09-25
  • [学会発表] Biological activity of FPX and PPG as novel compounds of promoter for plant growth2015

    • 著者名/発表者名
      Shota Tanaka
    • 学会等名
      RIKEN-KRIBB Chemical Biology Joint Symposium
    • 発表場所
      RIKEN, Wako, Saitama, Japan
    • 年月日
      2015-05-22 – 2015-05-22
    • 国際学会
  • [学会発表] Brassinosteroid negative regulator BSS12015

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Nakano
    • 学会等名
      The 2nd International Brassinosteroid Conference
    • 発表場所
      Wuhan,China
    • 年月日
      2015-05-20 – 2015-05-25
    • 国際学会 / 招待講演
  • [産業財産権] 植物の成長方法2016

    • 発明者名
      中野雄司、浅見忠男、山上あゆみ、長田裕之
    • 権利者名
      理化学研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT-JP2016-052052
    • 出願年月日
      2016-01-25
    • 外国
  • [産業財産権] 植物成長促進剤及び植物成長促進法2015

    • 発明者名
      中野雄司、浅見忠男、長田裕之
    • 権利者名
      理化学研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT-JP2015-078454
    • 出願年月日
      2015-10-20
    • 外国
  • [産業財産権] 植物のバイオマスを増大させる新規遺伝子及びその利用2015

    • 発明者名
      中野雄司、浅見忠男、宮地朋子、山上あゆみ、 石川典子
    • 権利者名
      理化学研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT-JP2015-078754
    • 出願年月日
      2015-10-09
    • 外国
  • [産業財産権] カルス誘導剤及びカルス誘導方法2015

    • 発明者名
      中野雄司、浅見忠男、山上あゆみ、長田裕之、大谷美沙都、出村拓
    • 権利者名
      理化学研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT-JP2015-065332
    • 出願年月日
      2015-05-28
    • 外国

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公開日: 2017-01-06  

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