研究課題
植物の形態変化を指標として化合物探索を行う植物ケミカルバイオロジー研究を遂行する過程で、植物の葉・茎・根について、形態を異常にすることなく、成長を促進させる新規化合物PPGを発見した。PPGは、植物への適用の報告例は全く無い人工合成化合物であり、動物や微生物での生理作用ターゲット等の分子メカニズムも明らかになっていない。植物成長制御を行う生理活性化合物としては、植物ホルモン類が知られるが、PPGの化学構造は、既知の天然および合成植物ホルモンのいずれとも全く異なっている。本申請は、分子生物学手法、生化学的手法などによってPPGの植物成長における分子機構を明らかにすることにより、植物の未知の成長制御システムを明らかにすると共に、植物バイオマスの増産・食糧増産に向けた新しい基盤技術を開発することを目指し、開始した。平成27年度は、PPGと細胞伸長や細胞分裂との関わりについて、主にロゼッタ葉の表皮細胞形態の詳細な解析を行った。その結果、PPGは、表皮の細胞伸長には影響がなく、細胞数を促進していた。また、細胞分裂期に発現応答するCYCB1遺伝子のプロモーターGUS遺伝子を用いた解析によって、このCYC遺伝子発現をPPGが活性化していることも明らかとなった。これらの結果は、PPGが細胞分裂を活性化していることを示唆すると考えられた。細胞分裂関連遺伝子の高発現化などによって、植物葉の分裂を活性化した場合、植物葉の全体形態は逆に小さくなる傾向があることが知られている。このPPGの場合は、分裂を促進したうえで、植物葉の全体が拡大しており、植物葉器官成長の未知の分子機構を刺激することによって、生理機能が発現している可能性を示唆すると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
平成27年度の成果は、PPGが、細胞分裂を活性化する機能を持つことを示唆すると考えられた。細胞分裂関連遺伝子の高発現化などによって、植物葉の分裂を活性化した場合、植物葉の全体形態は逆に小さくなる傾向があることが知られている。このPPGの場合は、分裂を促進したうえで、植物葉の全体が拡大しており、植物葉器官成長の未知の分子機構を刺激することによって、生理機能が発現している可能性を示唆すると考えられた。PPGの作用機作を知ることによって、植物成長の新しい制御機構を知ることが出来る可能性を示していると考えられ、非常に重要な進展が得られたと考えられた。
PPGの生理作用は、PPGのターゲットタンパク質への結合による活性化、もしくは阻害、のどちらかによって生じると考察される。PPGの生理作用の特異性より、このPPGターゲットタンパク質の同定は、植物成長の新たなメカニズムを明らかにする上において非常に重要であると考えられる。平成27年度は、光官能基を融合させたアガロースビーズにPPGが強固に結合したケミカルビーズ(PPGビーズ)の作製を開始した。このPPGビーズに結合するアラビドプシスのタンパク質群を、ビーズ画分に捕捉する実験条件についての検討を進める。平成28年度は、さらに特異性の高い結合タンパク質の探索を進める予定である。
物品費として申請した分子生物学試薬について、平成27年度は計画よりも若干額少量で、成果が得られたため。
PPG応答性遺伝子の解析など、分子生物学実験を平成28年度も進めることによって、使用する予定としている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 産業財産権 (4件) (うち外国 4件)
Plant Cell
巻: 27 ページ: 375-90
10.1105/tpc.114.131508
PLOS One
巻: March 20 ページ: 1-20
DOI:10.1371/journal.pone.0120812
Int. J. Mol. Sci.
巻: 16 ページ: 1-5
DOI:10.3390/ijms160817273
化学と生物
巻: 53 ページ: 734-736
JST news
巻: 9月号 ページ: 8-11