研究課題/領域番号 |
15K14717
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松浦 英幸 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20344492)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物の生きる知恵 / 胎生発芽抑制物質 / 粘性物質 / 除草剤の補助剤 |
研究実績の概要 |
固着性であるが故に植物は環境要因,病傷害などに対して植物独自の応答機構,いわゆる『植物の生きる知恵』を駆使して大地に根を降ろしている。ここで申請者は特に、以下の2つの項目を明らかとすべく研究を行っている。1】トマト果実内に存在する胎生発芽抑制物質の化学構造とその生理機能を明らかとする。2】原種トマト全面を覆う粘着物質の化学構造および展着剤としての可能性を明らかにする。 項目1】に関しては、トマト種子を覆うゼリー部分と種子を果実(40kg)より取り出し、活性成分をエタノールを用いて、抽出した。種々のカラムクロマトグラフィーを用いて、活性成分の単離を試みている段階である。おおよその見通しとして、あと2,3段階のHPLCを用いた精製により活性成分が得られるもの予想される。 項目2】に関しては、申請当初の段階で単離法のおおまかな道筋は付いていた。これを元に粘着成分の単離精製、構造決定を試みた。精製単離に関しては種々のHPLC条件を用いても、単離できない事が判明した。これは糖の母骨格の1位炭素がα位.β位を呈する平衡混合物である事によるものと考えた。そこで、水酸基に保護基を導入し、これを抑える事とした。ベンジル基の導入を試みたところ、これに成功した。これに伴い、1位および6位にベンジル基を導入した化合物の単離に成功し、現在、その構造を解析中である。おおまかなところはglucopyranoseの2位、3位、4位にアシル基がエステル結合した化合物であるところまでは判明している。また、当初の申請ではこの粘着性を応用して、除草剤の効果を高める補助剤としての利用を模索する事としていた。市販の除草剤に本化合物を加えて、効果を検討したが、予想に反して、除草効果の向上は観察出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請にあたって、1】トマト果実内に存在する胎生発芽抑制物質の化学構造とその生理機能を明らかとする。2】原種トマト全面を覆う粘着物質の化学構造および展着剤としての可能性を明らかにする。事を目標とした。 項目1】に関しては、もう2,3段階のHPLCを用いた精製により活性成分が得られるもの予想される。 項目2】に関しては、手を加えない純品としての単離を試みたが失敗に終わった。これは糖類の特徴である、1位炭素のα位.β位を呈する事によるものと考えた。そこで、ベンジル基の導入を試みたところ、これに成功し、1位および6位にベンジル基を導入した化合物の単離に成功した。大体のところはglucopyranoseの2位、3位、4位にアシル基がエステル結合した化合物であるところまではつかめている。また、当初の申請ではこの粘着性を応用して、除草剤の効果を高める補助剤としての利用を模索する事としていたが、除草効果の向上は観察出来なかった。他の応用面を模索して実験を行っている。 申請課題研究全般としては、胎生発芽抑制物質に関しては2018年度中に決定できる道筋はついており、粘着物質に関してはほぼ、その構造を明らかと出来ている。以上の事から研究は概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2018年度)も次に示す項目について研究を進める。1】トマト果実内に存在する胎生発芽抑制物質の化学構造とその生理機能を明らかとする。2】原種トマト全面を覆う粘着物質の化学構造および展着剤としての可能性 項目1】に関しては、生物活性を丁寧に行い、HPLCを用いて精製を進め、生理活性物質の構造決定に結びつける。 項目2】に関しては、構造決定が終了後は、保護基の脱保護を試み、天然に存在する化合物を取得する。構造に関する機器分析データの取得は我々が一番乗りである事から、論文化を進める。粘着物質の応用展開に関しては、葉面に散布する事で、水の蒸散を抑制する効果が期待できる。これを証明すべく、シロイヌナズナに散布しているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に購入したが、4月の決算となったために残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
3月の購入物品の支払いを行う事により、解消する。
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