研究課題/領域番号 |
15K14719
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丹羽 隆介 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60507945)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農薬 / 昆虫 / 酵素 / エクジステロイド / グルタチオンS-転移酵素 |
研究実績の概要 |
平成27年度までに、ショウジョウバエ、ハマダラカ、そしてコナガにコードされたNoppera-boの酵素活性を阻害する低分子化合物を計15種類同定した。平成28年度においては、これらの化合物の阻害機序を分子レベルで詳細に理解することを目指し、Noppera-bo と化合物との相互作用様式をX線結晶構造解析によって追究した。ショウジョウバエ由来Noppera-boの良質な結晶を得ることに成功し、アポ体の立体構造を解明した。ついで、この結晶を各阻害化合物およびグルタチオンを含む溶液にソーキングさせた上でX線結晶構造解析を行った。その結果、beta-エストラジオールを含む10種類の化合物について相互作用様式を解明し、いずれもグルタチオン結合部位に隣接した空間(H-site)に入り込むことを確認した。一方、ハマダラカとコナガ由来のNoppera-boの結晶化にも取り組んだが、こちらは結晶の取得に至らなかった。 また、阻害化合物の代表例としてbeta-エストラジオールに特に着目し、beta-エストラジオールと相互作用する Noppera-bo H-site 周辺のアミノ酸残基に変異を入れたタンパク質を発現・精製し、beta-エストラジオールの阻害能を検討した。その結果、あるアミノ酸残基の変異によって、beta-エストラジオールの阻害活性が顕著に低下することを見出した。すなわち、X線結晶構造解析で得られた知見は、少なくともbeta-エストラジオールに関しては生化学的にも妥当であることを強く示唆する。 並行して、15種類の化合物を昆虫に摂食させた際に成長阻害が生じるかを検討した。その結果、ある1種類の化合物が、高濃度条件ではあるが、ネッタイシマカの幼虫発育を阻害することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度に絞り込まれた化合物の阻害様式を、タンパク質の立体構造レベルで解析することができたことは、期待どおりの成果を得たと言える。昆虫発育に対する阻害能の検定はまだ途上であるが、当初より最終年度にも行う予定であったので、予定どおりである。
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今後の研究の推進方策 |
ショウジョウバエ以外の Noppera-bo タンパク質の結晶化に向けた実験を継続する。また、化合物とタンパク質の結合状態をさらに検討するため、表面プラズモン共鳴法を用いた実験、また阻害様式の速度論的な詳細な解析へと進む予定である。さらに、昆虫発育に対する阻害能の検定を完了させるべく、研究を進めたい。
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