研究課題
昨年度までに、ショウジョウバエ、ハマダラカ、そしてコナガにコードされたNoppera-boの酵素活性を阻害する低分子化合物を計15種類同定した。そして、このうちのある化合物Xがネッタイシマカの幼虫発育を阻害することが示唆されていた。本年度は化合物Xの効果をさらに検討するための実験を継続したが、開示されている構造を有する化合物Xそのものの純度を高めた溶液では発育阻害効果が認められなくなった。逆に、観察されていた発育阻害効果は、当初用いていた溶液に含まれていた化合物Xとは別の夾雑物によるものであることが判明した。この夾雑物の化学構造を同定するための実験を行ったが、残念ながら完了には至らなかった。一方、昨年度までに、Noppera-bo と阻害化合物との相互作用様式をX線結晶構造解析によって追究していた。そして、阻害化合物の代表例としてbeta-エストラジオールに着目し、beta-エストラジオールと相互作用する Nobo アミノ酸残基を特定した。本年度は、昨年度に引き続き、このアミノ酸残基(アスパラギン酸)をアラニンに置換した変異タンパク質を用いて、beta-エストラジオールの阻害効果を確認した。その結果、このアスパラギン酸残基はbeta-エストラジオールと水素結合を形成し安定性に寄与すること、アラニン変異型Noboタンパク質に対してbeta-エストラジオールの阻害効果は著しく下がること、そして表面プラズモン共鳴法を用いた相互作用解析によれば変異分子のbeta-エストラジオールに対する解離定数が大幅に上昇することを示した。これらの結果は、Noboのこのアスパラギン酸残基と形成する化合物の水素結合が、Noboの酵素活性を阻害するのに重要であることを示唆する。一連の成果は、今後のエクジステロイド生合成阻害剤のデザインに重要な知見を与えるものである。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Genetics
巻: 207 ページ: 1519-1532
10.1534/genetics.117.300391
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