研究課題/領域番号 |
15K14721
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
掛谷 秀昭 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00270596)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物有機化学 / 天然物化学 / 抗真菌剤 / 生合成 / ケミカルバイオロジー / 複合培養 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、細胞膜シグナル制御物質の探索過程において、Streptomyces nigrescens HEK616とTsukamurella pulmonsis TP-B0596の2種類の異なる放線菌の複合培養によって生産されるテトラヒドロキノリン骨格を有する新規アルカロイド群5-alkyl-1,2,3,4-tetrahydroquinolines (5aTHQsと命名)を見出している。そこで、本研究課題では、5aTHQs生合成機構の化学的解析、ならびに5aTHQsの生合成遺伝子クラスターの同定・機能解析と分子レベルでの活性化機構解明を目指している。 平成27年度は、5aTHQsの5位に有するアルキル鎖の多様性を把握するために、複合培養によって生産される5aTHQs類縁化合物を包括的に単離精製し、構造解析を行った。また、LC-MS/MS解析等を活用して、5aTHQs生合成に関与すると推定されるクロモフォア、分子量を有する代謝産物(想定・推定生合成中間体)を包括的に単離精製し、構造解析を行った。さらに、上記複合培養時の5aTHQs生産を担う微生物を同定するために純粋培養、複合培養、ドラフトゲノム解析等を行った結果、Streptomyces sp. HEK616遺伝子上に5aTHQs生合成遺伝子クラスターが存在することを明らかにした。一方、複合培養時に[1-13C]-酢酸および[1,2-13C]-酢酸を用いた安定同位体標識実験を行った結果、5aTHQsはポリケチド生合成経路で生合成されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複合培養時における5aTHQs生産菌がStreptomyces nigrescens HEK616であること、生合成遺伝子クラスター候補が同定されたこと、さらには同位体標識実験により5aTHQsがポリケチド生合成経路により生合成されること、などが明らかになったことなどから。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、複合培養における5aTHQs類の包括的探索・単離精製・構造解析を行う。なお、5aTHQs生合成中間体の存在量はごく少量であることも推定されるので、適宜、スケールアップ培養を試みる。また、同定した5aTHQs生合成中間体の全合成研究を行う。さらには、5aTHQs生合成遺伝子クラスター内の各ORFがコードする酵素群の機能解析を行ための各種基質化合物、想定中間体化合物等を設計・合成し、基質特異性を含めた酵素機能を解析する。現在、5-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンを出発原料に用いて5aTHQ-9iの合成経路は確立させているので、本合成経路を応用して各種基質化合物、想定中間体等の設計・合成を行う。一方、5aTHQs類の機能発現に関する構造活性相関研究を行う。
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