研究課題/領域番号 |
15K14722
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
野下 浩二 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40423008)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炭化水素 / トリデカン / カメムシ / アルデヒドオキシダーゼ |
研究実績の概要 |
クサギカメムシが生産するトリデカンについて、その生合成経路の解明と生合成に関わる酵素の機能解析を目標に研究に取り組んでいる。これまでにごく少量の安定同位体標識したグルコースがトリデカンに取り込まれることを確認していたが、クサギカメムシは吸汁する餌の量がそれほど多くないにも関わらず、成長がきわめて早く、十分量の安定同位体標識した化合物を効率よく取り込ませることに工夫が必要であった。そこで、まず、貧栄養の人工餌と十分な栄養を含む餌を併用し、カメムシの成長を調節することで、確実に安定同位体で標識されたグルコースをカメムシに取り込ませることができるようになった。結果として、トリデカンがグルコースから生合成されることが明らかとなった。次に、クサギカメムシ分泌腺に特異的に見られるアルデヒドデヒドロゲナーゼの機能を明らかにするために、酵素精製に取り組んだ。当初は、NAD(P)+ を補酵素とすると考えられていたため、アフィニティークロマトグラフィーを行ったが、担体に吸着されなかった。そこで補酵素の必要性を検討したところ、本酵素は NAD(P)+ を必要としないアルデヒドオキシダーゼであることがわかった。また、触角、頭部、腸管からも同様のアルデヒドオキシダーゼ活性が検出されたが、電気泳動の移動度の違いから、分泌腺のアルデヒドオキシダーゼとは異なることが明らかとなった。酵素活性の高かったカメムシ頭部からアルデヒドオキシダーゼを精製したところ、本酵素は 65 kDa のサブユニットからなる四量体であることが示唆された。また、脂肪族アルデヒドや芳香族アルデヒドを酸化できる幅広い基質特異性を持つ酵素であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トリデカン生合成経路の解明については、クサギカメムシの成長を調節できる餌がわかり、安定同位体標識した化合物を十分に取り込ませる系が確立できたため、おおむね順調に進んでいると考えている。一方で、生合成関連酵素の機能解析については、鍵となる酵素が、当初予想していたデヒドロゲナーゼとは異なることがわかった。この酵素がアルデヒドオキシダーゼであり、酵素量の多い頭部から同様の活性を持つ酵素を精製する手法を確立できたものの、分泌腺内の酵素の精製には至っていない。また、分泌腺内のアルデヒドオキシダーゼがトリデカン生合成に関わる直接的な証拠を得るには至っておらず、その点に関してはやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
安定同位体標識したグルコースを取り込ませたクサギカメムシについて、脂肪酸分析を行い、トリデカンの前駆体であると考えられるミリスチン酸が標識されているかを検討する。生合成経路を明らかにした段階で、いったん論文にまとめることを考えている。一方、生合成関連酵素の機能解析については、クサギカメムシ頭部のアルデヒドオキシダーゼの精製法を用いて、分泌腺内に存在するアルデヒドオキシダーゼの精製に取り組む。電気泳動の移動度を基準にすると、頭部のアルデヒドオキシダーゼと分泌腺のアルデヒドオキシダーゼは、活性は似ているものの、同一の酵素ではないことはわかっている。構造や基質特異性など性質の違いを明らかにすることを突破口に、分泌腺特有の働きやトリデカン生合成との関わりを検証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、目的とする生合成関連酵素の精製と遺伝子クローニングを予定していたが、多少遅れが出たため、精製までで終わり、当初予定していた遺伝子クローニングに必要な物品の購入を控えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、当初予定していた酵素遺伝子のクローニングのために充てる。平成28年度に請求する助成金は、酵素遺伝子の発現実験や論文投稿に掛かる費用などに充てる予定である。
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