研究実績の概要 |
我々は、抗生物質ストレプトスリシン(ST)の部分化学構造であるβリジン側鎖が非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)によって生合成されることを明らかにしている(Nature Chem. Biol, 8, 791-797, 2012)。他方、ST類縁抗生物質であるBD-12は、βリジン側鎖の代わりにグリシン類縁体側鎖を有するが、その生合成はNRPSではなく新規ペプチド合成酵素によって合成されることが強く示唆された。そこで、本研究では、BD-12の生合成メカニズムを解明するとともに、さらに、その他微生物ゲノムに存在するST類縁化合物の生合成遺伝子群を同定し、これらを利用したコンビナトリアル生合成で新規ST類縁化合物の創製を目指している。 平成27年度は、研究項目Aとして「BD-12生合成遺伝子群の機能解析」を行った。BD-12生産菌S. luteocolor NBRC13826のドラフトゲノム解析の結果からBD-12生合成遺伝子群(34 kbp)を同定し、発現ベクターへ連結し、異種放線菌に導入した。導入株を培養し、培養液をLCMSで分析したところ、BD-12を検出したことから、本遺伝子群がBD-12生合成遺伝子群であることを明らかにした。さらに、FemXA様酵素をコードするorf11遺伝子が、グリシン類縁体側鎖の生合成に関与するペプチド合成酵素遺伝子であることを見出した(C. Maruyama et al., Appl. Environ. Microbiol., in press.)。さらに、BD-12の生合成において2つのN-メチル基を導入するメチル基転移酵素遺伝子を同定した。研究項目B「微生物ゲノム情報を利用とした新規ST類縁化合物の探索と生合成遺伝子群の機能解析」では、ある種の放線菌において、新規ST類縁化合物生合成遺伝子群の存在を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目Aにて当初から計画していたBD-12生合成遺伝子の同定と機能解析については順調に進展し、学会発表および論文発表(C. Maruyama et al., Appl. Environ. Microbiol., in press.)にて報告してる。また、BD-12生合成遺伝子群に見出したメチル基転移酵素遺伝子の同定および機能解析も順調に進展している。研究項目Bにおいても、微生物ゲノム情報を利用した新規ST類縁化合物の探索と生合成遺伝子群の機能解析を展開し、新規ST類縁化合物生合成遺伝子群の存在を確認している。以上の結果から、当初の計画通り本研究が進展していると言える。
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