研究課題
抗生物質BD-12は、βリジン側鎖の代わりにグリシン類縁体側鎖を有するST類縁化合物であるが、その生合成はNRPSではなく新規ペプチド合成酵素によって合成されることが強く示唆された。そこで、本研究では、BD-12の生合成メカニズムを解明するとともに、さらに、その他微生物ゲノムに存在するST類縁化合物の生合成遺伝子群を同定し、これらを利用したコンビナトリアル生合成で新規ST類縁化合物の創製を目指した。当初の研究計画では、研究項目Aである「BD-12生合成遺伝子群の機能解析」は、平成27-28年度の2年計画で実施する予定であった。しかし、研究が順調に進展し、BD-12のグリシン類縁体側鎖がtRNA依存性ペプチド合成酵素によって合成されることを見出し、平成27年度内に学会発表および論文発表することができた。そこで、平成28年度は、研究項目B「微生物ゲノム情報を利用とした新規ST類縁化合物の探索と生合成遺伝子群の機能解析」、および、研究項目C「コンビナトリアル生合成による新規ST類縁化合物の創製」を実施した。研究項目Bにおいては、BD-12生合成相同遺伝子群からFemXABファミリー酵素遺伝子(sba18)を同定し、その遺伝子産物について機能解析を行った。本酵素は、Gly-tRNAだけでなく、Ala-tRNA、Ser-tRNAを基質として利用できることを見出し、さらに、Ala-tRNA、Ser-tRNAから得られた酵素反応産物は、新規ST類縁化合物であるとともに、微弱ではあるが抗菌活性を示すことを明らかにした。さらに、研究項目C としてST生合成遺伝子群とsba18遺伝子の共発現を行ったところ、Gly-tRNAから生合成されるglycylthricinの生産を確認した。
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Appl. Environ. Microbiol.
巻: 82 ページ: 3640-3648
10.1128/AEM.00725-16