研究課題
クルクミンは脂質代謝改善や抗炎症などの多彩な健康機能が知られる一方、その生理作用発現機構は未だ不明な点が多い。最近、我々は、クルクミンが何らかの機構で選択的かつ積極的に細胞内に取り込まれ、生理機能を示すという手がかりを得た。そこで本研究では、クルクミンの細胞内取り込み機構と生理作用発現の分子機構の解明を目的に研究を行った。はじめに、クルクミンの細胞への取り込み機能の証明を行った。クルクミンや代謝物、天然類縁体などを処理した種々の細胞および培地を分析したところ、クルクミンは細胞内に積極的に取り込まれることが明確となった。そこで、クルクミンの細胞内吸収機構を明らかにするために、様々な仮説(クルクミン受容体の存在など)を立てて検討をしたところ、クルクミンの吸収には培地中の血清成分が関与し、中でも血清中のアルブミンが重要な因子であることが示唆された。このように、クルクミンの細胞内吸収には、培地成分との相互作用が重要であることが初めて明らかとなり、細胞内吸収と生理作用発現の関係性が今後より明確になると期待される。さらに、クルクミンの生物学的利用能の改善に向け、近年注目されているナノ粒子にクルクミンを封入し、その吸収代謝を明らかにしようとした。in vivo試験において、クルクミンナノ粒子はクルクミンの吸収性を高めるが、ほとんどのクルクミンは代謝されることが示唆された。in vitro試験によりクルクミンナノ粒子とクルクミンの吸収性の違いは、両者の胆汁酸ミセルへの取り込まれ易さの違いと予想された。これらのことから、クルクミンの吸収性を高めるには、クルクミンをナノ粒子に封入することは有効であるが、ナノ粒子化による生理作用向上に関しては更なる研究が必要と考えられた。本研究の成果は、クルクミンの吸収・代謝的特性を明確にし、食品の新しい機能発見に繋がり、疾病予防に役立つと期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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