研究課題/領域番号 |
15K14727
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 忠夫 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00118358)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / ビフィズス菌 / 菌体外多糖 / ペプチド / ヨーグルト |
研究実績の概要 |
平成27 年度には、Biacore を用いてヒト大腸ムチンに結合性の高い菌で、菌体外に易消化性のアミロース様多糖を生産する菌株と、筋肉増強に必須の分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシンなど)含有ペプチド類を生産する菌株を選抜することをめざし、主として一番目の課題に取り組んだ。 1.菌体外に易消化性多糖を菌体外多糖(EPS)として生産する菌の選抜 東北大学病院より分譲されたヒト大腸標本正常部位よりムチン層を採取し、そこからBL寒天培地などを用いて培養法で各種ビフィズス菌を単離した。大腸ムチン(HCM)および血液型糖鎖抗原を用いて、プラズモン共鳴(SPR)を利用したバイオセンサーBIACORE-1000 によりムチン糖鎖と親和性の高いビフィズス菌をマススクリーニングする。本装置は、表面プラズモン共鳴現象を利用して生体分子間での相互作用を非標識下で分析可能な極めて優れた装置であり、腸管内での付着性機構をシミュレート可能である。また、筆者が世界で初めてBIACORE を用いてスクリーニングした手法(Uchidaet al., Res. Microbiol., 157, 659-665, 2006)を用いて実施した。 2. 菌体外に分岐鎖アミノ酸(BCAA)を単独またはペプチドとして生産する菌の選抜 老年期の筋肉減少は、筋肉の必須アミノ酸の約30-40%を占める分岐鎖アミノ酸を効率良く摂取する必要性がある。とくにロイシンやイソロイシンの摂取は重要である。これらのアミノ酸を単体またはペプチド体の形で分泌する乳酸菌をスクリーニングすることが2つ目の課題として位置づけた。項目1と項目2をこの時間的順位で実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当研究室のビフィズス菌ライブラリーより菌体外に有用な菌体外多糖(EPS)を生産する菌株をスクリーニングを行い、複数のホモグリカン(グルコースのみからならアミロース様構造多糖体)を生産する有望菌を得ることができた。しかも、その大半は酸性基として従来から広く知られている硫酸基やリン酸基ではなく、亜硝酸基という珍しいEPSであった。本ビフィズス菌はヨーグルトなどで摂取後に下部消化管でのグルコースの供与体として作用し、しかも自身が資化利用可能である特性を有していた。下部消化管でのビフィズス菌の減少は、糖源としてのグルコース枯渇によることが知られているので、この点を解決できそうである。1年目の計画としては予想を越えて、優れたビフィズス菌株の選抜に成功したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に、研究課題の一つである、ヨーグルトで菌体をデリバリーした際に、下部消化管で、枯渇する傾向にあるグルコース供与体を菌体外多糖として分泌する理想的な菌株をスクリーニングすることに成功した。 平成28年度の大きな課題としては、菌体外に分岐鎖アミノ酸(BCAA)を単独またはペプチドとして生産する菌の選抜である。老年期の筋肉減少は、筋肉の必須アミノ酸の約30-40%を占める分岐鎖アミノ酸を効率良く摂取する必要性があると考えている。とくにロイシンやイソロイシンの摂取は重要である。これらのアミノ酸を単体またはペプチド体の形で分泌する乳酸菌をスクリーニングする本年度の課題として最優先して実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも微生物スクリーニング用のBiacore解析用のセンサーチップの消費量、関連試薬の試料量が予想よりも消費しなかったことにより、多少の消耗品での予算執行が少なくなったことに由来するものであった。これは、より効率的に事前に菌株集団を絞り込むことに成功したことにも由来しており、計算間違いによるものではない。
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次年度使用額の使用計画 |
また、本研究を実施中に、貴重な菌体試料を保蔵するディープフリーザーが急遽故障して、使用不能となった。年度途中であるが、至急フリーザーの購入資金として充てることを希望している。ただし、農学研究科の雨宮キャンパスから青葉山キャンパスへの移動は、平成28年11月の予定であるので、この時期までは他の研究室からの代替品を使用し、移転が完了したら新規のフリーザーに移動させる予定である。
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