(1) 食肉加工品より単離された変敗乳酸菌 Leuconostoc mesenteroides NH04 株は同種の標準株 2 種に比べてポリスチレン表面およびムチンへの接着性が高いことが見いだされた。また、標準株に比べて高い細胞接着能力を有し、特に亜硝酸ナトリウム存在下で細胞接着性が増加することが見いだされた。 (2) 25 ℃と 10 ℃で培養した NH04 株のタンパク質を抽出しプロテオーム解析に供した結果、15 種の低温誘導性タンパク質が同定された。 (3) NH04 株固有のプラスミドの複製に関わると推定される領域を、pUC19 の ori 配列を含む領域、およびエリスロマイシン耐性遺伝子と融合し、pUCNH04E を構築した。NH04 株に対する高い形質転換効率と保持率が認められ、本菌を宿主とした異種タンパク質発現系用のベクターとして有用と考えられた。 (4) NH04 株の低温適応機構を明らかにすることを目的として、低温誘導的に発現する膜タンパク質群を解析した。25 ℃に対して 10 ℃での生産量が 2 倍以上のタンパク質をペプチドマスフィンガープリンティング (PMF) により解析した結果、5 種のタンパク質が同定された。このうち 2 種 (GlnQ、OpuBA) は適合溶質の輸送に関わる膜タンパク質のホモログであり、適合溶質の輸送と低温適応との関連が示唆された。 (5) NH04 株の細胞接着に関与するタンパク質を明らかにするため、表層タンパク質をビオチンラベル化試薬 Sulfo-NHS-SS-biotin と反応させ、標識されたタンパク質をストレプトアビジンビーズで回収した。亜硝酸ナトリウム存在下で培養した菌体で生産量が増加したタンパク質を PMF 解析に供した結果、bifunctional acetaldehyde-CoA/alcohol dehydrogenase のホモログが同定された。本タンパク質は Listeria monocytogenes において接着分子として作用することが報告されており、NH04 株においても接着分子として働くことが推測された。
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