研究課題/領域番号 |
15K14735
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 匡央 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90294909)
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研究分担者 |
城内 文吾 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00548018)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アルツハイマー / 糖代謝 / 酸化コレステロール / アミロイドβタンパク質 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)は2型糖尿病や高コレステロールといった様々な生活習慣病との関連が報告されている。ExHCラットは、食事コレステロールに応答して速やかに高コレステロール血症を発症する病態モデル動物である。この原因遺伝子であるSmek2の欠損変異は肝臓において糖・脂質・アミノ酸代謝異常に影響を与えており、糖代謝異常の結果、2型糖尿病様の症状を発症することが明らかとなっている。また、受動的回避学習試験での成績からExHCラットは他の糖尿病モデルラットより学習能が低いことが報告されている。本研究ではExHCラットがADを発症していると仮定し、AD患者の脳で見られる老人斑の構成成分であるアミロイドβタンパク質(Aβ)の蓄積を評価した。Aβ分解作用が報告されているS-allyl-L-cysteine (SAC)を用いて前処理を行うことで定量した。また、脳内の酸化コレステロール状態の異常は神経変性を誘導すること、特に24-OHや27-OHがADの進展に寄与することが報告されていることからGC-MSによりこれらの分子の脳中の存在量を測定した。 脳ホモジナイズ液のSAC処理により、各群において3つの低分子量のAβが検出された。しかし、Aβが検出されない個体もあり、バンド強度の比較で群間に有意な差は見られなかった。このことから今回の飼育条件下ではAβ蓄積の点でExHCラットがADを発症していないことが考えられる。しかし、AD発症と負の相関がある24-OHと正の相関のある27-OHの定量を行ったところ、ExHCラットにおいて24-OH/27-OH比が低下傾向を示し、脳内の総酸化コレステロールに占める27-OHは有意に高値を示したことから、ADのリスクを高めていると考えられる。また脳内で神経伝達の発達に不可欠のコレステロール量が減少したことは学習能の低下に寄与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳ホモジナイズ液のSAC処理により、各群において3つの低分子量のAβが検出された。このことから今回の飼育条件下ではAβ蓄積の点でExHCラットがADを発症していないことが考えられる。しかし、AD発症と負の相関がある24-OHと正の相関のある27-OHの定量を行ったところ、ExHCラットにおいて24-OH/27-OH比が低下傾向を示し、脳内の総酸化コレステロールに占める27-OHは有意に高値を示したことから、ADのリスクを高めていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ホモジナイズ液のSAC処理により、各群において3つの低分子量のAβが検出された。しかし、Aβが検出されない個体もあり、バンド強度の比較で群間に有意な差は見られなかった。このことから今回の飼育条件下ではAβ蓄積の点でExHCラットがADを発症していないことが考えられる。しかし、AD発症と負の相関がある24-OHと正の相関のある27-OHの定量を行ったところ、ExHCラットにおいて24-OH/27-OH比が低下傾向を示し、脳内の総酸化コレステロールに占める27-OHは有意に高値を示したことから、ADのリスクを高めていると考えられる。また脳内で神経伝達の発達に不可欠のコレステロール量が減少したことは学習能の低下に寄与していると考えられる。したがってExHCラットはAβの蓄積は確認できなかったもののAD発症リスクを上げている。飼育期間を延長することで、ADを誘導するか検討する。
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