研究実績の概要 |
フグ卵巣(生)のマウス試験において、フグ卵巣の毒量は個体差が大きいことがわかった。LC-TOF-MS分析において、テトロドトキシン(TTX)に加え、いくつかの類縁体と思われるピークが検出され、5,6,11-trideoxytetrodotoxinの存在が同定された。また、LC-TOF-MSとマウス試験両方の結果から、TTX類縁体にも毒性を有することが明らかとなった。このことからTTXだけで毒性を評価することは安全上問題であり、マウス試験と機器分析の両方で評価することの重要性が確認された。次いで、フグ卵巣の糠漬け樽から採取した糠、塩汁及び糠汁中のTTX及び5,6,11-trideoxytetrotodoxinについてLC-TOF-MSにより分析した結果、フグ卵巣(生)同様にTTX及び5,6,11-trideoxytetrotodoxinが検出された。このことは、卵巣中のTTX及び5,6,11-trideoxytetrotodoxinは卵巣から糠、塩汁及び糠汁に移行することが考えられる。また、これらの糠、塩汁及び糠汁のTTX及びその類縁体は、ある一定期間まで増え続けた後に減少することから、さらに異なる類縁体へと変換され、毒性が低減化していくことが示唆された。同様に、塩漬け、その後糠漬けされた卵巣のTTX含量と5,6,11-trideoxytetrotodoxinについて検討を行った結果、糠、塩汁、糠汁の結果と同様、フグ卵巣(生)を塩漬け、その後糠漬けすることで、まずTTXは減少、5,6,11-trideoxytetrotodoxinは増加し、その後5,6,11-trideoxytetrotodoxinも減少することが明らかとなった。フグ卵巣の糠漬け樽から採取した糖、塩汁及び糠汁中のTTX及び5,6,11-trideoxytetrotodoxin濃度はフグ卵巣のそれと比べ顕著に低いことから、TTXからその類縁体への変化は、フグ卵巣中でも進行することが示唆された。
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