研究実績の概要 |
マウスに高脂肪食を暗期8時間のみに制限給餌すると、自由摂食群と比較して、体重および内臓脂肪組織重量の増加が著しく抑制される。さらに、肥満により変化する呼吸交換比(RER)の日周リズムが改善し、暗期における酸素消費量および二酸化炭素排出量の増加、エネルギー代謝の亢進を明らかにした。高脂肪食の暗期8時間の制限給餌は、時計遺伝子として中心的な役割を担うBmal1の発現パターンを正常化し、代謝異常も改善する。しかしながら、これらの摂食時間の制限による肥満の改善が、時計遺伝子の位相の修正によるのか、あるいは、肥満の改善による時計遺伝子発現の正常化によるのかは不明である。今年度は時計遺伝子および体熱産生に着目し、摂食時間制限による肥満の予防メカニズムを明らかにすることを目的として研究を実施した。Bmal1遺伝子欠損マウス (KO), 野生型マウス (WT)に暗期8時間の摂食時間制限を行い、RERおよび活動量を測定した。また、野生型マウスに高脂肪食を自由に摂食させる群と、暗期8時間のみに摂食時間を制限する摂食時間制限群に分けて1週間予備飼育後、ZT0~20に各種臓器を回収し、肝臓における時計遺伝子および脂質代謝関連遺伝子、鼠蹊部脂肪組織および褐色脂肪組織における体熱産生関連遺伝子の発現を測定した。摂食時間制限マウスのRERは、KOマウスとWTマウス共に、明期に脂質、暗期に糖質をエネルギー源とする日周リズムを形成した。KOマウスは、WTマウスと比較して、活動の日周リズムが大きく変化した。Cpt-1発現は、群間で差はなかったが、Fas, Scd1, Srebp1c 発現は、自由摂食群と比較して、摂食時間制限群において減少し、摂食時間制限は、脂質合成を抑制することで肥満を改善することが示唆された。また、摂食時間制限は、時計遺伝子発現および体熱産生関連因子には影響を及ぼさないことが明らかとなった。
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