研究課題/領域番号 |
15K14741
|
研究機関 | 苫小牧工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岩波 俊介 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00290669)
|
研究分担者 |
小島 洋一郎 北海道科学大学, 工学部, 教授 (50300504)
甲野 裕之 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70455096)
山口 和美 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00133702)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ケミカルセンサ / 味覚・嗅覚 / 統計的数値解析 / 食品 / 五基本味 / おいしさ |
研究実績の概要 |
本研究では,ヒトの化学感覚である味覚や嗅覚を代替するセンサを組合せ,食品を識別する機器システムの開発を目指している。食品の味や香りの評価を数値解析により客観的に行う技術の開発は,中小企業などの技術継承が難しい団体にとっても有用である。今年度は五基本味のうち地域企業や地方公共団体からの要望の高い風味調味料,および継続試験中の食酢に着目した。食品の中でも“だし”は,核酸,アミノ酸,有機酸などの様々な旨味成分が含まれ相乗的に作用しており,総てを定量し味の評価を行うことは時間と費用の面において大変困難を伴う。今回,市販の風味調味料だし7種(かつお,こんぶ,いりこ等)を調理使用時の濃度0.667%に統一したもの,および相乗効果を考えた混合比で濃度調整したものについて,11項目(透過率,pH,電気伝導率,密度,粘度,糖度,塩分,各種イオン濃度)の物性値測定を行った。ヒトが旨味を感じる感覚は舌の異なる受容体の電気信号の相互作用によるものと考えられているため,計測原理の異なる電気伝導率とpHのデータより散布図を用いて相関を調べたところ,混合出汁の成分比率および出汁を分類できる可能性が示唆された。続いて,だし中の呈味成分についてGlu-Na,IMP-Na,GMP-Na,NaCl,KCl,GlcSucの物性値を測定した。このうち旨味成分特有の変化を示した240-400nmの透過率からは,250nm付近に核酸とアミノ酸・ペプチドと見られる吸収が現れ,旨味成分の検出と濃度の予測が出来る可能性が示唆された。一方,果実酢についてはハスカップからワインビネガーを試作し,その製造過程での機能生成分アントシアニンの減衰に与える要因(温度,pH,アルコール濃度,有機酸濃度)を物性値測定により検証した。その結果,各種発酵時のアントシアニンの維持には温度,アルコール濃度の上昇速度の抑制が重要であることが分かった
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては,分析手法の異なる測定機器を多数利用して実験を行うため,1つの食材に要する時間を短縮することが課題となっていたが,前年度からの蓄積データにより事前に物性値測定条件を予測できるようになった。 だしの分析については,今回 研究対象とした“かつお,こんぶ,いりこだし”の物性値分析評価のうちpHと電気伝導率,250nmにおける吸収に有用と思われるデータが見られたことから,官能試験の結果と摺り合せを行う予定である。 果実酢(ハスカップワインビネガー)については,ハスカップの風味,色,機能性の維持に着目した発酵を行っており,昨年度の課題となっていた官能検査については2016年度のものづくり実験実習の一環として学生32名,地域企業・地方公共団体職員の20名で実施しており,物性値試験のデータとの摺り合せもおおかた完了し基礎的知見を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに五基本味のうち酸味,塩味,旨味について様々な分析機器を多用し,測定したデータから「果実酢,海塩,風味調味料」の評価・分類の可能性を得ることができた。今後は,これらの情報をさらに詳細に測定し,加えて北海道産の「魚醤油」などの試作や,だしを配合する際の比較・評価にもターゲットを広げてデータの取得を行い,風味調味料作りの際に有用となるデータベースの構築を行う予定である。また,果実酢については今回おおかたの試作法が確定したため,果実自身の物性値から試作果実ワインビネガーの物性評価までを一環して管理することが出来るように,数値解析データを利活用する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に向けてこれまでの研究成果をまとめて学会発表するため,次年度に持ち越すこととした。
|
次年度使用額の使用計画 |
所属している日本食品工学会等での学会発表への参加を予定している。
|