研究最終年度である平成29年度は、1)宮城県内での児童を対象とした新たな調査(アンケート調査、授業実践、資料調査等)の実施、2)アンケート調査データのより詳しい解析、3)岩手県内の調査結果とあわせて研究全体の総括、4)学会誌への投稿を含む研究成果のとりまとめを順次進行させることとしていた。 1)については、宮城県東松島市立宮野森小学校3年生児童を対象とした、総合的な学習の時間内で行われた「森の学校」活動の調査(児童が作成したポートフォリオの調査、参与観察による児童の行動調査、担任教諭へのヒアリング調査)を実施した。なお、3年生児童を対象としたことから、アンケート調査の実施は見送った。 2)については、岩手県内で実施したアンケートデータを精査し、入力の修正追加等のデータの調整作業を行った。そのうえで新たな分析を行い、現在とりまとめ中である。 3)については、岩手県内のアンケート調査データと収集した文集のテキスト分析結果をあわせて検討し、一部を第129回日本森林学会大会(高知大学)で報告した。 4)については、現在、学会誌の投稿に向けて作業を進行中である。 以上、研究成果については、現在、成果公表のための準備段階にあるが、要約すると次のとおりである。1)東日本大震災の津波等を経験した子供たちは、4年以上を経過した時点で見る限り、ごく一部を除けば、人々に被害を及ぼす自然の恐ろしい面と、人々を癒してくれるポジティブな自然とは、気持ちの中で区別ができていること、2)むしろ復興に伴ってなくなっていく森に対して不安な気持ちを持つなど、今後の被災地の子供たちに対する自然体験が重要であり、被災した子供たちへの心のケアを行いつつ、今後、子供たちの自然体験を促進していく方策が重要であること、が確認された。
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