研究課題/領域番号 |
15K14745
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
陶山 佳久 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60282315)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アズマザサ属 / 雑種識別 / MIG-seq法 / 集団遺伝学 |
研究実績の概要 |
同一地域内に自生するササ類の推定雑種であるアズマザサ属ウゴザサ(Sasaella masamuneana f. hashimotoi)と、その推定親種であるササ属チマキザサ(S. palmata;同節の近縁種を含む)、およびメダケ属アズマネザサ(P. chino)の3種、さらには同一地域内に自生するその他のササ類についてSNP解析を行うことで、推定雑種の両親種を遺伝的に明らかにすることを試みた。 次世代シーケンサーを用いたSNP分析法であるMIG-seq法を用いてSNPを検出し、その遺伝子型を基にそれぞれ算出した遺伝的な距離を2次元散布図にする主座標分析(PCoA)を行った結果、各種ごとにまとまりが見られ、推定雑種は推定両親2種の中間的な配置関係にあることがわかった。遺伝的集団構造(STRUCTURE)解析においても、推定雑種は推定両親種の遺伝的要素をほぼ半分ずつ持っていることが示された。また、ABC法による集団動態推定を行った結果、祖先集団から推定両親種がまず分化し、その後に2種間の交雑によってウゴザサが形成されたとするシナリオが支持された。母性遺伝する葉緑体DNAの塩基配列情報を比較した結果では、推定雑種からは推定両親種と同じハプロタイプのみが検出された。 以上の結果から、本研究で対象とした推定雑種アズマザサ属ウゴザサは、メダケ属とササ属の属間雑種由来であるという仮説が強く支持された。本研究の手法は、その他の同様な雑種関係の解明にも応用できると考えられ、本研究ではそのモデル的成果が得られたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた解析はほぼ予定通り進展したが、標本試料の分析だけは実現できなかった。しかし、当初目的としていた成果については十分に得ることができ、データ解析については、当初予定していなかった集団動態履歴推定を盛り込むことができ、予定以上の成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
27年度中に得られた成果について論文化を進める。また、当初予定していたナンブスズ節を対象とした同様の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験補助者の雇用費については、適切な人材が確保できなかったため支出を次年度に見送ることとし、その分の費用が余剰となった。また、学会発表のための旅費支出を予定していたが、発表した国際シンポジウムが勤務地近くで開催されたため、その旅費が不要となり、その分の支出が余剰となった。一方で分析実験用の試薬代が予定よりもかかったため、物品費は予定よりも高くなり、一部相殺された結果、最終的に34万円弱を次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に見送ることとした実験補助者(研究支援者)を28年度に雇用することとし、その人件費として繰越金額の大半を使用する。それ以外はほぼ当初計画の予定通りとする。
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