研究課題
マクロに見た森林生態系には不均一環境が常に存在し、ここに個体成長、枯死のダイナミクスが生じる。こうしたダイナミクスの基盤となる根を含む樹木全体の個体生理機能(光合成・呼吸)の大半は1枚の葉などのミクロな情報からの推定であり、ミクロとマクロの間の理解には高い壁がある。理由は、ミクロとマクロの中間にある(変異性や可塑性の高い)樹木個体の効率的で正確な実測によるシステミックな(全身的な)生理学データや研究がないためである。そこで我々は、従来困難とされる光合成の同時測定法を開発して実測し、さらに根を含む個体全体の器官別呼吸も独自に開発した方法で多数実測し、個体機能量(光合成・呼吸)を評価、検討することを目的として研究を開始した。研究開始初年度は、樹木個体全体の呼吸と光合成の測定装置の開発と検証を行った。本計画では、多数の樹木を測定する必要があるため、光合成速度は対象の樹木個体の光合成が光飽和した際の最高値Amax(μmolCO2/sec)を個体光合成速度の指標として用いた。2、3年目は、山形大学農学部構内の種子貯蔵炭素を使い果たした成長2年目の稚樹41個体を材料にもちいた。材料としたそれぞれの稚樹の置かれた相対的な光環境を光量子センサーで評価したところ2.9~42%の幅であった。この光環境に応じた個体全体の呼吸Rと個体のAmaxを検討した。Amax/Rの値は個体の置かれた環境に関係なくほぼ一定の値であり、暗い環境に置かれた個体が呼吸超過で枯死する兆候は見られず、それぞれの環境で個体の炭素収支は枯死しないように個体レベルで調整されている可能性がある。また、暗い環境にあり従来被陰されているとされる個体であっても、隣接した大型個体の枯死や倒壊により、光環境が回復した場合には環境の変化に応じた成長再開の機能を保持しているのだろう。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: No. 2995
10.1038/s41598-017-03162-5
http://www.envr.tsukuba.ac.jp/~somosomo/yamaji.html
http://yudb.kj.yamagata-u.ac.jp/html/100000603_ja.html