研究課題/領域番号 |
15K14747
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀田 紀文 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00323478)
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研究分担者 |
地頭薗 隆 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (50145455)
小田 智基 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70724855)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 深層崩壊 / 基岩風化 / 水文過程 / 渓流水質 |
研究実績の概要 |
深層崩壊は発生前に斜面の変形や変動を伴うため,微地形条件に基づき潜在的な深層崩壊の特定が可能になりつつあるが,微地形条件の変化は長期的に生じるため深層崩壊の発生頻度は低い.発生時期予測の難しさ,効果的な災害対策の障害となっている.本研究では,深層崩壊の発生時期の予測手法開発を目的とし,多くの潜在的な深層崩壊発生箇所が特定されている台湾で,研究期間全体で約800の水質サンプルの取得と分析・解析を行った. 昨年度までの結果から,台湾における潜在的な深層崩壊の多くがChaochou層(潮州層:中新世中期のレンズ状砂岩を含む頁岩・粘板岩層)に集中し,Chaochou層で取得された渓流水質サンプルからのみ,EC(電気伝導度)とSiO2の間に有意な負の相関が認められることが明らかになった.今年度は水質サンプルの取得を継続しつつ,Chaochou層の複数地点で土壌や岩石の採取を行い,台湾成功大学において,降雨をカラム内に半分ほど満たした状況で長期間静置し,カラム中の水質変化に関する実験も実施した. 実験で得られた土壌水は,EC,SiO2濃度ともに渓流水よりも低い傾向にあったが,ECが低くSiO2濃度が高いものと,ECが高くSiO2濃度が低いものの2種類に分類できた.すなわち,渓流水における負のEC-SiO2関係のエンドメンバーとなる値を示した.これまでの解析結果を合わせることで次のような考察が可能である.Chaochou層における水質は,基岩層における鉱物組成の不均質性の影響を受けて複雑であり,EC,SiO2のどちらかの単一の指標を用いるだけでは流出経路を捉えることが出来ない.しかしながら,ECとSiO2の関係性を用いることで,基岩を通過するような深い流出経路を持つ地点を抽出することが可能であり,両者の関係から地下の岩盤の風化度(潜在的なすべり面の形成)をある程度推測できると考えられる.
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備考 |
現在結果の取りまとめを行っており,近日中に論文として投稿をしたいと考えている.ただし,台湾の各地域の危険度に関わる結果が得られていることから,カウンターパートである台湾成功大学防災研究センターから,結果の精査について申し入れがあり,現在は,台湾側が抽出した潜在的な深層崩壊地について共同で見直しを行っているところである.この作業にはもう少し時間がかかる.
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