研究課題/領域番号 |
15K14749
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60323474)
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研究分担者 |
北村 系子 国立研究開発法人森林総合研究所, 北海道支所森林育成研究グループ, 主任研究員 (00343814)
三村 真紀子 玉川大学, 農学部, 准教授 (60451689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 近交弱勢 / 針葉樹 / ddRAD / リファレンスゲノム / 人工交配 / 自殖家系 / ホモ接合 / アルビノ |
研究実績の概要 |
1.エゾマツ天然母樹家系の近交度と成長の関係解明:平成28年度は、平成27年まで育成したエゾマツ天然母樹家系の実生苗について、冬芽形成のデータを得るとともに、樹高、直径などのサイズを測定した。また、各個体から針葉を採取してDNAを抽出し、10個のSSRマーカーでジェノタイピングを行った。母樹と子供群のジェノタイプデータを比較して他殖率を求めたところ、2家系ともに97%を超える値であった。また、成長と近交度の関係を調べた結果、近交度が高い個体で成長が良い個体はなかったものの、近交度が低くても成長が悪い個体と良い個体があり、近交度と成長の間には有意な相関がみられなかった。
2.エゾマツddRADリファレンスの作成:ddRADで断片長が長く、デプスが深い良質なデータを取るために、GCリッチな制限酵素を用いた結果、リードの7割以上をマップできることが分かった。これにより、リファレンスに貼り付けたRADのみで解析することで、デプスが深く、得られる配列長が長い、信頼性の高いSNPデータが得られるようになる。現在、天然母樹家系の親であるIW-1とIW-3を対象として、次世代シーケンサーMiseqを用いた解析を行っている。子供群については、同じ制限酵素を用いて、ddRADを行うことで近交度と成長の関係、近交弱勢に関わる遺伝子の探索が可能となる。
3.トドマツ自殖系統の作出:平成28年4月に北海道支所構内のトドマツ1個体に袋掛けを行い、高所作業車を用いて自殖花粉を用いた人工交配を行った。軟X線装置を用いて充実種子の選別を行った結果、自殖種子(1500種子)と自然交配種子(400種子)を得ることができた。これらは、2017年春に苗畑に播種して、自殖種子と自然交配種子での発芽率、形態異常、色素異常(アルビノ)、初期成長などの形質を調べる。特に、アルビノではクロロフィル生合成に関わる遺伝子に何らかの異常が起きていることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エゾマツでは詳細な成長、フェノロジーのデータが得られた。また、エゾマツのゲノムワイドSNP解析をするためのリファレンスゲノムを作成することに成功した。さらに、トドマツの自殖家系を作出することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
エゾマツについて、成長の良い個体と悪い個体を選び、ddRADによるゲノムワイドSNP解析を行い、両者で差があるSNPを探索する。さらに、該当SNPを含む塩基配列をベースにして、近交弱勢に関連する遺伝子の探索を行う。 トドマツでは、自殖家系と自然交配家系を比較して、自殖家系で見られるであろう色素異常や形態異常の個体について着目し、特にアルビノ個体と健全個体の遺伝子発現解析を行い、近交弱勢によって引き起こされる色素異常に関する遺伝子ネットワークを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノムワイドSNP解析をするために、リファレンスゲノムを作成した。このリファレンスゲノムへマッピングすることにより、より長い塩基配列を得ることが可能となる。突然変異個体の遺伝子発現解析から、候補遺伝子アプローチを行うことが可能であると分かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
ゲノムワイドSNP解析をするために、2017年6月にマクロジェンに外注を行う。また、トドマツのアルビノ個体、健全個体の遺伝子発現解析を行うために、RNAseqの外注を行う。
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