研究課題
林床植物は生物多様性の点で森林の重要な要素であり、豊かな森林にしか見られない稀少種も多い。一部の非光合成植物では根に共生する菌類から炭水化物を獲得していること(菌従属栄養性)が明らかにされているが、大多数の林床植物の生活様式は不明である。本研究では葉緑体を持った林床植物全般を対象にして、部分的な菌従属栄養性の有無や程度を明らかにし、その共生菌を特定することを目的とする。本年度は富士山の亜高山帯針葉樹林内に設置した3つの調査地において、代表的な林床植物の光合成特性を調べるとともに、炭素と窒素の安定同位体比を測定した。一般に、菌類の炭素安定同位体比は独立栄養植物に比べて有意に高い値を示すことから、部分的に菌に炭水化物を依存している植物の炭素安定同位体比もその依存度に応じて高くなり、菌従属栄養性の有無や程度の指標となる。また、各林床植物個体の直上において全天写真を撮影し、光環境の指標となる開空度を求め、光合成特性や安定同位体比との関係について解析を行った。その結果、シャクジョウソウ亜科に属す植物において、菌従属栄養性が認められ、その程度は種によって異なること、光環境によって光合成特性や菌従属栄養性を可塑的に変化させる種とそうでない種があることが明らかとなった。また、シャクジョウソウ亜科の植物の根に共生する菌類、および周辺樹木の根に共生する外生菌根菌をDNA解析によって同定して比較した結果、一部の共生菌を選択的に利用している植物種とそうでない種が存在している可能性が示された。今後は解析サンプル数を増やすとともに、得られた結果をさらに詳細に解析する。また、暖温帯の林床植物についても調査・解析を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通りに調査を実施し、解析や分析も順調に推移しているため。
当初の計画に従い、解析サンプル数を増やして普遍的な知見が得られるようにする。
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