研究課題
林床植物は生物多様性の点で森林の重要な要素であり、豊かな森林にしか見られない稀少種も多い。一部の非光合成植物では根に共生する菌類から炭水化物を獲得していること(菌従属栄養性)が明らかにされているが、大多数の林床植物の生活様式は不明である。本研究では様々な林床植物を対象にして、部分的な菌従属栄養性の有無や程度を明らかにし、その共生菌を特定することを目的とする。本年度は千葉県と茨城県の暖温帯林を対象にして、林床植物を網羅的に採取し、安定同位体と根に共生する菌種の同定を行なった。一般に、菌類の炭素安定同位体比は独立栄養植物に比べて有意に高い値を示すことから、部分的に菌に炭水化物を依存している植物の炭素安定同位体比もその依存度に応じて高くなり、菌従属栄養性の有無や程度の指標となる 。採取した試料を乾燥・粉末化した後、安定同位体質量分析計で炭素と窒素の安定同位体を計測した。調査の結果、ラン科やシャクジョウソウ亜科に属す緑色植物において、部分的な菌従属栄養性の可能性が明らかにされた。また、採取した植物の共生菌については、根の一部からDNAを抽出し、菌特異的プライマーでリボソームDNAのITS領域を増幅し、その塩基配列を元に菌種を同定した。その結果、これまで調べられたことのない菌従属栄養植物において共生菌に関する新規知見が得られた。さらに静岡県内の冷温帯林でも菌従属栄養性の可能性のあるラン科植物の共生菌を調べ新たな知見が得られた。得られた知見の詳細は今後論文として取りまとめるほか、学会や一般講演などを通じて成果の普及を図る予定である。
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Microbes and Environments
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