研究課題/領域番号 |
15K14752
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
城田 徹央 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (10374711)
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研究分担者 |
安江 恒 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00324236)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 周極域 / クロトウヒ / 根系 / 個体間競争 |
研究実績の概要 |
本研究は,アラスカ内陸部の丘陵地に生育するクロトウヒ個体群を対象に,根系の相互干渉の有無を明らかにすることを目的にする。この林分では地上部の林冠閉鎖が無いことから,光をめぐる競争は弱い。しかしながら,樹高約8m程度で樹冠衰退が認められ,クロトウヒは地上部の個体間競争を経験することなく一生を終えると考えられる。その生育過程において地下部での競争状態はどうなっているのか,という疑問に答えるため地下部の掘り取り調査を行った。仮説としては1)地上部と同じように地下部もギャップが多く個体間干渉はない,2)地下部のギャップはほとんどないが,個体間干渉があり根系の棲み分けが認められる,3)地下部のギャップはほとんどないが,個体間干渉はなく根系は絡み合っている,の3つである。 アラスカ大学フェアバンクス校の長期生態系モニタリングサイト:CPCRWの北向き斜面に生育するクロトウヒ個体群を対象に,地下部掘り取り調査を行った。調査区は6m四方のプロットであり8mクラスの老齢個体に囲まれている。調査区内には樹高3m以下の若い個体が10個体分布している。このプロットを0.25mの256グリッドに細分し,グリッドごと,個体ごとに太根(直径1mm以上)の長さを計測した。同時に微地形や有機物層の影響を見るため,掘り取り前と鉱質土壌露出後の地表面の比高をレーザー墨出し器によって計測した。 根系が観察されなかったグリッドは4つ(1.5%)に過ぎず,地下部にはギャップが存在しないことが明らかになった。一方,プロット内個体の各グリッドの根長は,個体サイズ(正),根元からの距離(負),有機物層の厚さ(正),プロット内の他個体の根長(負)の影響を受けた。このように地下部にギャップは存在せず,プロット内他個体から負の影響があることから,3つの仮説のうち二つ目の仮説が妥当であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり平成28年度までにアラスカ現地での調査を完了し,目的としていたデータを全て収集した。6m四方のプロットを0.25m四方の576グリッドに分割し,立地条件や個体ごとの根の分布状況を調査したため,このデータは位置空間情報を含む巨大なものとなっている。 プロット内全域にプロット内個体またはプロット外個体の根が分布しており,地下部では地上部のようなギャップが存在していないことが明らかにされた。このことは地下部の競争が苛烈であるため,地下部への物質分配が大きく,地上部への投資は後回しになっているという状況を示唆している。 位置空間情報に関して個体をベースにした競争関係についてGLMを用いた解析が完了した。その結果,特定の個体のあるグリッドにおける根長は,その個体のサイズ,根元からの距離,グリッドの有機物層の厚さ,そしてそのグリッドに分布するプロット内他個体の根長が影響していた。すなわちプロット内の小さな個体同士は競争関係にあり,棲み分けているといえる。 以上のように,地下部に「根系ギャップ」が存在するかどうか,地下部では棲み分けが生じているか,という2点が明確になり,新しい知見が得られたことから概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現地での全てのデータを収集したため,H29年度は現地での根系調査は行わない。ただし,地上部及び地下部の肥大成長パターンの解析のために,採取サンプルの年輪解析を行う。 一方,解析において不明瞭とされたプロット外の個体の根長の影響について精査する必要がある。プロット外個体の根長は,プロット内個体のそれとほぼ同等の値を示しており,競合している可能性が否定できない。しかしながら平成28年度の解析では,γ分布を仮定するGLM解析の制約上,プロット内個体の存在するグリッドのみを対象としており,完全にプロット内個体とプロット外個体が棲み分けている場合には,その影響を抽出できないことになる。 そこでH29年度は,まずプロット内個体の根の有無について,プロット外個体の根長がどのように影響しているのかを解析する。影響が認められる場合,内側個体の根の有無,内側個体の根長という2段階の解析結果を同時並行して解析する。これらの複合モデルによって,根の分布に対する微地形や他個体の効果を定量的に評価できるようになり,競争過程における地下部動態の重要性を評価できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも現地調査にかかる費用が抑えられたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度請求額と合わせて年輪解析の補助,学会発表などに使用する。
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