研究課題
森林における窒素飽和現象の診断には、その森林に降下物として流入する窒素量と、渓流・河川を通じて流出する窒素量の情報が用いられる。これは、窒素飽和現象が多くの場合、土壌中、地下水中に滞留する窒素量と流出する窒素量の増加を伴う事による。モデル化に際して、集水域を対象とする窒素流出に関するデータの収集は不可欠であり、できるだけ地理的に広範な情報が必要となる。本年度は、前年度までに全国レベルの広域サンプリングによって得られた渓流水の流出窒素に関するデータを利用する、集水域レベルの窒素循環シミュレーションモデルを作成した。モデルは、4種類の窒素プール(植物体中の窒素、土壌有機態窒素、NH4+-N、NO3--N)と、それらの間の窒素フロー(形態変化)によって形作られる内部循環機構をシミュレートする。土壌中の窒素の形態変化は、有機態窒素の無機化、NH4+の酸化(硝化)、NH4+やNO3-の不動化などからなるが、これら形態変化はすべて微生物活動によるので、変化量の計算には、反応物の貯留量と、温度、土壌水分などの物理的な環境条件が影響する。また、独立栄養微生物である硝化細菌による硝化以外の反応は、従属栄養細菌によって制御されており、炭素の可給性がその強度を左右する。このため植物体を含めた炭素循環機構をカップリングしている。植物体のバイオマスは光合成の結果増加し、この植物の成長に伴う蒸散もシミュレートされる。作成したモデルを用いて長期シミュレーション(250年)を実施し、性能のテストを実施した。モデルは植物体のバイオマス、各窒素プールの長期的な変動をシミュレートすることができた。また、窒素降下物による外部からのNH4+とNO3-のインプットの急激な変動についての応答についての数値実験を行い、各窒素プールの変化や、系外へのNO3-の流出に合理的に時間遅れが計算されることも明らかになった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Ecological Research
巻: 33 ページ: 19-34
10.1007/s11284-017-1523-7
巻: 32 ページ: 279~285
10.1007/s11284-016-1420-5
http://bre.soc.i.kyoto-u.ac.jp/~nobu/saito/Interests_and_direction.html