研究課題/領域番号 |
15K14762
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研究機関 | 国立研究開発法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
小坂 肇 国立研究開発法人森林総合研究所, 九州支所, グループ長 (20343791)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精巣 / 成熟 / 低温接触 |
研究実績の概要 |
ハラアカコブカミキリはシイタケ栽培用のホダ木の害虫であり、日本本土への侵入種でもある。課題担当者はこれまでにこのカミキリの人工飼料による飼育法を開発し、通年での飼育を可能とした。そこで、本課題では飼育温度を調節することによりハラアカコブカミキリの生活史を制御して自然界での産卵時期である春に受精能力のない羽化直後の成虫を創り出すことを第1の目標とする。そして、羽化した成虫を飼育して継時的に解剖することにより卵巣や精巣の発達程度を調べるとともに交尾試験をすることで羽化してからどれくらいの期間が不妊であるのかを明らかにすることを第2の目標とする。この研究を行う究極の目標は、不妊虫放飼法によるハラアカコブカミキリの根絶(地域個体群の絶滅)である。 昨年度の飼育で1月から3月のおよそ150頭の羽化成虫を得ることができた。すなわち、春に羽化直後の成虫を得るという第1の目標は達成できた。今年度は、この成虫を恒温で飼育して解剖し、低温接触することなく精巣が成熟するかどうか観察した。直径10㎝、高さ10㎝の容器に雄雌1頭ずつの成虫を入れ、クヌギ枯れ枝を餌として飼育した。容器には乾燥防止のため湿らせたミズゴケ小量を入れた。餌木の交換やミズゴケへの給水を適宜行った。この方法で22対の雌雄成虫を飼育して、死亡した成虫を直ちに解剖して精巣を観察した。その結果、個体差はあるものの雄成虫は概ね1か月程度で性成熟するものと思われた。次年度は雄成虫が低温に接触することなく性成熟するのかどうか、交尾試験を行って確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(昨年度)春にハラアカコブカミキリの生活史を制御して孵化直後の成虫を得て、今年度その成虫を飼育して精巣の発達程度を観察した。このように研究計画調書に記載した通りに進捗した。ただし、28年度の幼虫の飼育結果が思わしくなく、野外で成虫を捕獲して室内で産卵させて幼虫の飼育をする必要があるため、概ね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は交尾試験を行う。当初、4月から交尾試験を行う計画であったが、28年度の飼育結果が思わしくなかった。そのため、野外で成虫を捕獲して室内で産卵させ、幼虫を飼育して供試虫とする。27年度に行った幼虫の促成的飼育と抑制的飼育により人工越冬の成虫と羽化直後の成虫を得て、今年度中に交尾試験を終える。
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次年度使用額が生じた理由 |
幼虫の飼育が思わしくなく、飼育のための人件費の支出が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は幼虫の飼育をし直す必要があるため、飼育のための人件費として使用する計画である。
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