研究実績の概要 |
平成28年度は、申請時の計画に従うとシリコン半導体をはじめ、金ナノ粒子など、種々の反応触媒の効果を把握することや、水相での反応だけでなく、有機相も混在させた2相系での効果などを中心に進めることであった。反応触媒については、すでに平成27年度に計画記載のものの検討が終了したため、小林らによるルイス酸とドデシル硫酸ナトリウム塩等を組み合わせて微小領域では2相が達成できると考えられる触媒系を中心に、平成27年度に引き続いて検討を行った。 CuCl2, ZnCl2, SnCl2などのルイス酸塩や、ドデシル硫酸(DOS)ナトリウムと複合させて得られる金属ドデシル硫酸塩などを触媒として、温度条件、時間などを変えながらグルコース変換率、HMF収率、固体残渣率等を検討した。 結果として、触媒にSn(DOS)2を用いて140℃で3時間反応させた場合、グルコースの変換率92.6%、HMF収率30.5%、固体残渣率47.8%でグルコースからHMFを得ることが出来た。また、この方法を、平成27年度に検討したセルロースの臭化リチウム水溶液中での加水分解処理によるグルコース生成と中和処理の過程等に併せ、一連の反応をセルロースから行った場合、セルロースからは変換率100%、HMF収率33.7%、固体残渣率21.78%となり、ほぼ同等のHMF収率が得られたが、固体残渣率の改善は著しいものがあった。セルロースの加水分解から2段階で生成する場合、Sn(DOS)2を用いたHMF生成時の条件がグルコースから1段で行う場合に比べ、中和操作によりルイス酸が希釈されるため、固体残渣率の向上があったと考えているが詳細は不明である。セルロースから容器の交換を行わず(one potで)、HMFを得る場合の収率として、33.8%という値は既往の文献と比較して必ずしも最も高い部類ではないが、比較的高い値であると考えている。
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