研究課題/領域番号 |
15K14769
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
天野 良彦 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (80273069)
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研究分担者 |
水野 正浩 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (60432168)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | セルロース / swollenin / 階層構造 |
研究実績の概要 |
植物が生産するセルロースは,1本のグルカン鎖が複数集まった繊維が複数集合することで,結晶性の高い階層構造が形成されている。近年,セルラーゼ高生産菌Trichoderma reeseiからセルロース繊維の膨潤能を有し,セルラーゼと相乗効果を示すタンパク質としてSwolleninが見出された。本タンパク質は,弱いセルロース分解活性を示すが,高いセルロース繊維への吸着能を示し,吸着処理後に超音波処理を行うことで,セルロース繊維の微細化が進むことが明らかとなっている。本研究では,Swolleninのセルロース繊維膨潤能について立体構造的な観点から調べるために,一次構造からドメイン構造を推定し,部分領域の異種発現を試みた。Swolleninは,N末端側にセルロース結合ドメイン(CBM1)を有し,リンカー領域を挟んで植物由来エクスパンシンと弱い相同性を有する領域から構成されている。一方,二次構造予測の結果から,リンカー領域とエクスパンシン様領域との間には特定に二次構造を示さない機能未知な領域が含まれている。現在までに,セルロース結合ドメイン及びリンカー領域を含む全長の組換え体取得はできているが,各部分領域については可溶性画分として得られていない。これは,セルロース結合ドメイン及びリンカー領域以外の領域では,複数の構造単位から構成されていることが示唆され,部分発現においては安定した構造体として得ることが難しいためと考えられる。今後は,得られている全長配列でのSwolleninを用いて,溶液中におけるSwollenin分子の動的な挙動や,セルロース繊維との吸着挙動を測定することで,Swolleninのセルロース膨潤能を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Swollenin の立体構造解析に基づく生化学的特徴の解析 Swollenin の立体構造についてはまだ報告がないが、揺らぎがある分子と予想され、結晶化に成功していない。結晶化しやすい分子の調整のため、分子表面のアミノ酸の改変を試みているが、結晶化には成功していない。そのため、正確な分子構造とセルロースとの相互作用についてはいまだ解明ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.Swollenin の立体構造解析に基づく生化学的特徴の解析:Swollenin とセロオリゴ糖との複合体構造を得ることができれば、Swollenin 分子のセルロースへの吸着機構が明らかとなり、電子顕微鏡観察から得られる巨視的な吸着挙動との考察により、より詳細なSwollenin の機能を明らかにすることが可能になると考えられる。H28 年度は、セロオリゴ糖を中心とする基質との複合体構造解析を進める。 2.Swollenin のセルロース繊維への作用部位の観察:Swollenin が実際の高次の階層構造を有するセルロース繊維に対して、どのような部位に作用するのかを明らかにすることは、Swollenin の機能を明らかにする上では非常に重要となる。既に今までの知見から、組換えSwollenin に対して金粒子(φ=5nm)を付加させたSwo-Gold を用いたSEM観察に成功している。しかし、一般的な手法での表面観察だけでは、階層間への影響を調べることは難しい。そこで、樹脂含浸法による固定化後に繊維切片を作製し、Swollenin のセルロース表面から深さ方向への作用について観察することを試みる。 3.Swollenin 処理後のセルロースの構造解析:前年度から引き続き実施するが、H28 年度は、種々の条件でSwollenin を作用させたセルロースに対する機器分析を実施する。
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