研究課題
リグノセルロースのバイオリファイナリーにおいては、高選択的・高効率なリグニン分解法の確立が必要である。本研究では、リグニンに対し親和性の高い分子を得ることを目的として、リグニン親和性12-merペプチドを連結したタンデムダイマーペプチドを設計し、これらのペプチドとリグニンの相互作用を解析するとともに、タンデムダイマーペプチドを組み込んだラッカーゼを発現し、その反応性を解析した。SPRによって、ペプチドとスギ由来MWL (CMWL) およびユーカリ由来MWL (EMWL) の親和性測定を行った結果、タンデムダイマー化したペプチドはモノマーのペプチドと比較して約10倍高い親和性をもつことを明らかにした。ペプチドのCDスペクトル測定では、モノマーペプチド、ダイマーペプチドとも、ランダムコイル構造をとることが示された。FTIRではランダム構造の他、ストランド状構造もとることが示唆された。リグニンと混合させたモノマーペプチドのFTIR二次微分スペクトルでは、ペプチドのスペクトルが大きく変化し、リグニンとの相互作用によりペプチドのコンフォーメーションが大きな変化することが示された。次に、リグニン結合性ダイマーペプチド配列を担子菌Trametes versicolorのラッカーゼに連結させた遺伝子を、Pichia pastoris の発現ベクターに組み込み、組換えラッカーゼを生産した。リグニン結合性ペプチド配列は、N末端およびC末端に連携した組換えタンパクを調製した。リグニンとの親和性が強化された組換え酵素とnative型酵素を、単離リグニンと木材のマイクロ波水熱反応物と反応させた結果、リグニン結合性ペプチド配列を組み込むことにより、リグニンとの反応性が上昇し、低分子フラグメントが増えることを明らかにした。
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