研究課題/領域番号 |
15K14777
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
岸本 崇生 富山県立大学, 工学部, 准教授 (60312394)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リグニン / HRP / 脱水素重合 |
研究実績の概要 |
ケナフやサイザル麻などの非木材繊維リグニンは、γ位がアシル化された構造が多いこと、β‐O-4構造の割合が非常に高いことが知られている。本研究ではシナピルアルコールなどのモノリグノールのγ位への電子吸引性の置換基の導入や、反応溶媒の種類の変更などを通して、モノリグノールラジカルの電荷密度を変えることにより、ラジカル同士の静電相互作用(クーロン反発)を抑制し、モノリグノールの酸化カップリングの部位を制御することを目的としている。ケナフやサイザル麻などの非木材繊維リグニンのγ位に存在することが確認されているアセチル基やp-ヒドロキシベンゾイル基、p-クマロイル基などの電子吸引性の高いアシル基を有するモノリグノールを用い、計算科学ソフトを用いた電荷密度の測定や、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)や塩化鉄などを実際に用いた酸化カップリング反応を解析することを計画している。これらを通してラジカル同士の静電相互作用がリグニンの化学構造決定に関わる因子であるかどうかを明らかにし,一般的なフェノール類の重合制御による機能性ポリマーやポリフェノール類の選択的合成へと展開するための基盤技術の確立を目指している。今年度はシナピルγ-アセテートのHRPによる酸化カップリングを主に検討した。その結果、塩化鉄を用いた場合には、シナピルアルコールよりもシナピルγ-アセテートのほうがよりβ-O-4構造を形成しやすいという結果が得られたが、HRPを用いた場合はいずれの場合もβ-O-4構造を持つ化合物の生成は確認できなかった。一方、溶媒の種類やモノリグノールの供給速度を変えることにより、β‐β構造をもつ2量体の生成が確認できた。HRPを用いた場合と塩化鉄を用いた場合との結果の違いに関してはさらに検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、計算科学ソフトによる計算を先に行うことを計画していたが、それに変えてHRPによるシナピルγーアセテートの反応と反応生成物の解析を先に行ない、一定の結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
シナピルγーアセテートに加え、p‐クマロイル基を持つシナピルアルコールの合成を行う。さらにその脱水素重合を行い、反応生成物の解析、さらに計算科学ソフトによる電荷密度等の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中に機器の購入などで予算額の99%以上使用した。次年度使用額は1万円以下であり、全体への影響はほとんどない。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として必要な試薬類や器具類の購入に用いる。
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