研究課題/領域番号 |
15K14778
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研究機関 | 国立研究開発法人 森林総合研究所 |
研究代表者 |
大村 和香子 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 領域長 (00343806)
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研究分担者 |
北條 優 琉球大学, 農学部, 研究員 (80569898)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シロアリ / 大顎 / 金属 / 強度 |
研究実績の概要 |
木材害虫として知られるシロアリは、大顎を使って様々な行動を行う。木材を食べる場合は、木材をかじりとり口内へと運ぶ。‘蟻道’と呼ばれるトンネル状のシロアリの通り道を作るときには、大顎で土壌を保持・運搬して自らの糞と混ぜながらそれらを構築する。外敵と遭遇すると大顎で相手に素早く噛み付く。本研究はシロアリの大顎に強靱な耐久性が付与されるメカニズムについて、脱皮前後のシロアリ個体を利用して大顎への金属の蓄積過程、金属キャリアタンパクの同定と発現・機能解析、大顎の耐久性評価 を行うことにより明らかにするものである。 今年度は、ネバダオオシロアリに対して、他昆虫で脱皮促進作用が知られる薬剤を投与することにより、各薬剤の最適濃度等の検討を実施した。さらに脱皮前の大顎の耐久性を評価するため、微粒子を材料表面に衝突させて生じる磨耗の進行速度をもとに材料強度を計測する、マイクロスラリージェット(MSE) 試験の適用を試みた。脱皮促進試験の結果から薬剤によるネバダオオシロアリの感受性の違いが示された。MSE試験ではいずれの種でも、エロージョン率が表面から深さ30 μmまで大幅に減少後、深さ30~50 μmでほぼ一定となり、表面から深さ方向に強度が変化することなどが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロアリの脱皮促進に関しては、従来より効果が確認されている幼若ホルモン類似体2種と比較して、今回施用した他昆虫で脱皮促進効果が認められる薬剤では効果が認められなかった。当該結果を受け、次年度も他薬剤を使用してシロアリの脱皮促進効果を引き続き検証する必要が生じている。一方、大顎の強度に関しては、新たに試行したMSE試験法による評価の有効性が確認できたため、次年度は改良法の検討や脱皮個体への応用がスムーズに実施できる状況となった。 金属キャリアタンパクについては、、ネバダオオシロアリゲノムの遺伝子情報から金属キャリアタンパクの遺伝子と思われる配列を複数確認できた。しかし、実際の発現については明瞭な結果が得られなかったため、脱皮前後の個体を使用して比較・検討を実施すべきと考えている。 以上の状況から、現在の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
シロアリの脱皮促進に関して、初年度に引き続き薬剤の効果を検討するとともに、脱皮前後のシロアリを用いて、金属キャリアタンパクの発現量の差異等を検討する。 また、シロアリ大顎の耐久性付与メカニズムについては、脱皮前後の表面強度をMSE試験法を用いて評価する。なおMSE試験については、昨年度多角アルミナを投射に使用したが、今回はジルコニウム製球状体を使用して評価を試み、相互の試験データの比較を行う。 さらに土壌中での分解が遅い大顎について、好気的条件下での分解試験(JIS K 6953-1)による生分解抵抗性を評価し、脱皮直後の大顎から着色していく過程での耐久性、生分解抵抗性と着色度との関係等を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の未使用に関しては、研究分担者の異動に伴い、予定していたオーストラリアにおけるムカシシロアリ採取の実施ができなかったことが挙げられる。研究代表者における物品費の繰り越しが生じた理由については、試薬の購入価格と定価との差額分によるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度へ繰り越した旅費については、研究分担者と日程等の調整を行いムカシシロアリの採取もしくは、オーストラリアの研究者に依頼しての入手に努める。脱皮促進効果が期待できる試薬については、昨年度に引き続き検討が必要なため、今年度、新たな試薬の購入に充てる。
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