定置網漁業等が行われる沿岸海域では流向・流速、水温、波高などの情報がリアルタイムで公開されるようになってきたものの、水質や生物環境に関わる情報は不足している。本研究は、不足している水質や生物に関連する「新たな漁場環境の指標の開発」を目的として実施した。最終年度にあたる本年度は、初年度に確立した定置網漁場近傍の観測体制を引き続き維持してデータを取得するとともに、取得したデータを用いてADCP(超音波ドップラー流向・流速計)の反射強度に着目して分析を行った。 前年までの研究で、ADCPの反射強度データは水質や生物生産の情報になる可能性を見いだしたため、今年度は引き続き取得したデータを分析して更なる検証を行った。現地観測は当初の計画通りに実施し、問題なく全てのデータを取得することができた。取得した観測データから、前年までのデータと同様に、ADCPの反射強度は初夏から真夏にかけて小さくなる季節変化していたこと、そして反射強度が比較的大きい時期にはプランクトンの存在を示唆する「日の出、日の入り時刻と同期した日周期の変動」が見られること等を確認することができた。 ADCPの反射強度データは夏季に濁度が低くなるという研究対象海域の水質の季節変動特性やプランクトンの存在の有無を示唆していたことから、リアルタイムで発信することにより若狭湾周辺の水質や生物生産の情報になることが明らかとなった。これらの研究成果は、学会や研究集会で報告した。
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