研究課題/領域番号 |
15K14784
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
桑田 晃 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, グループ長 (40371794)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プランクトン / ピコ真核藻類 / 生活史 / パルマ藻 / 珪藻 / 海洋生態学 |
研究実績の概要 |
ピコ真核藻類は、極微小な細胞サイズながら、単なる細胞分裂による増殖だけではなく、より複雑な生活史により生存している可能性がゲノム解析により示唆されている。しかし、未だ生活史が発見された例はなく、その実体は全く不明である。近年申請者らは、ピコ真核藻類の一グループであり、海洋で最も繁栄している珪藻と極近縁の『パルマ藻』が、珪酸質の殻を持つ「有殻細胞ステージ」と無殻で遊泳性の「鞭毛細胞ステージ」を持つことを明らかにした。これは世界初のピコ真核藻類の生活史の発見事例である。そこで本研究は、自然群集からパルマ藻が持つ両細胞ステージを蛍光顕微鏡下で識別する方法をTSA-FISH法の改良により開発する。次に、この方法を用いて、生育域である親潮域をフィールドとして現場環境でのピコ真核藻類:パルマ藻の生活史を包括した個体群動態を明らかにし、ピコ真核藻類の隠れた生活史適応戦略の解明に挑む。具体的には、1)TSA-FISH法と珪酸質に特異的な蛍光色素を利用した、蛍光顕微鏡下でパルマ藻の生活史を識別する観察法の開発、2)開発した観察法を用いた培養実験によるパルマ藻の生活史応答の解析、3)親潮域をフィールドとしたパルマ藻の生活史の季節動態の観測、4)パルマ藻の生活史戦略の適応的意義の検証を行う。 本年度は昨年に続き、蛍光顕微鏡下でパルマ藻の生活史の各ステージを識別する観察法の開発を中心に行い、パルマ藻をターゲットにしたTSA-FISH法の開発と珪酸質に特異的な蛍光色素を用いた生活史の識別法の開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年に引き続き、パルマ藻をターゲットにしたTSA-FISH法と珪酸質に特異的な蛍光色素を用いた生活史の識別法の開発に取り組み、パルマ藻の細胞ステージを蛍光顕微鏡下で識別する方法の開発を進めた。しかしながら、まだ確立のためにはTSA-FISH法のprobeを改良する必要がある。一方、昨年初めての発見となったピコ真核藻類の1グループである微小珪藻類の特異的な生活史については、成果を論文として公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)TSA-FISH法と珪酸質に特異的な蛍光色素を利用した、蛍光顕微鏡下でパルマ藻の生活史を識別する観察法の開発については、引き続き開発を進め、観察法を確立する。 2)室内培養実験によるパルマ藻の生活史応答の解析については、パルマ藻の生活史応答を定量的に評価するため、パルマ藻の培養株を閉鎖培養系で培養し、時系列的にサンプリングを行い、生育環境とパルマ藻の各生活史ステージ(「有殻細胞」と「鞭毛細胞」)の動態を1.で開発した方法を用いた追跡を試みる。 3)親潮域をフィールドとしたパルマ藻の生活史の季節動態の観測については、主な生育海域である亜寒帯域におけるパルマ藻の生活史を含めた個体群動態の現場調査を親潮域において開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、当予算によりパルマ藻のFISH法の開発等に関してのスペインの共同研究者との研究打ち合わせや学会参加等を予定していたが、予定が変更となり来年度以降への実施となった。また、今年度は手法の開発に集中した結果、試薬等の物品費用の支出が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
パルマ藻のFISH法確立のための国内外の研究者間の研究打ち合わせ旅費、FISH法に必要な試薬代、次年度より開始予定の航海調査に必要な旅費、調査器材の購入、実験補助員の雇用費等に使用予定である。
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