研究課題/領域番号 |
15K14791
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
萩原 篤志 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (50208419)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海産カイアシ類 / Tigriopus japonicus / 量子ドット / 体内蓄積 / 標識 / 毒性 |
研究実績の概要 |
魚介類の種苗生産の餌料として必須な動物プランクトンに対し、安定供給が可能な培養技法の研究が実施されているが、培養を崩壊させずに長期間維持することは現在でも困難である。そして培養の崩壊現象のメカニズムは未だに不明の点が多い。本研究では、微小な動物プランクトンのバイオロギングとも言える標識方法を開発すると共に、培養液中に存在する様々な世代や異なるステージの個体を個別に標識することで個体群動態を解析し、動物プランクトンの個体群の成長と崩壊のメカニズムを探る。そのため、コロイド状量子ドット(Quantum Dot、以下QD)を動物プランクトンに取り込ませることにより、個体の標識法を確立すると共に、個体群の成長と崩壊のメカニズムを個体レベルで解明することを目的とした研究を開始した。 今年度は、海産カイアシ類Tigriopus japonicusを用い、QDsの毒性の有無と曝露時の濃度と時間による体内蓄積への影響を検討した。卵嚢を持つ成熟メス3個体を海水5 mLとともに培養器に収容し、QDsと餌料(Tetraselmis tetrathele)の混合液を投与した。毒性については3つの異なる濃度で産仔数を指標として検討した。QDs蓄積の確認のため、親と混合した培養で孵化したノープリウス幼生と飼育水交換後に孵化したQDs曝露経験のないノープリウス幼生を蛍光顕微鏡で観察した。その結果、QDs 8 nMでは産仔数への影響はなかったが、16 nM, 40 nMでは対照区に比べ産仔数が減少した。また、QDsのすべての濃度で24時間後には蓄積が確認されたが、時間の経過に伴い減少した。QDs濃度8 nMに24時間曝露すると、QDs曝露経験のない次世代ノープリウス幼生の50%で親からの伝播が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tigriopus japonicusがQDを取り込み、QDが次世代に伝播することを確認し、曝露濃度の調節を通じて、T.japonicusに毒性を与えない濃度を特定した。同時に、曝露経験のない次世代に高率でQDを伝播させる技法を開発した。T.japonicusについては当初の目標の2/3を達成でき、ワムシやミジンコについても同様の技法で研究を実施する実験系を確立した。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を通じて、カイアシ類を材料として確立した技法を、ワムシとミジンコについても応用し、研究を継続する。さらに、これを個体レベルでの標識として活用し、動物プランクトンの個体群動態における個体群増殖とその後の個体群崩壊現象のメカニズムの個体レベルでの検証に発展させる計画である。
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