• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

動物プランクトンの標識による個体群動態の解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K14791
研究機関長崎大学

研究代表者

萩原 篤志  長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (50208419)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード量子ドット / 体内蓄積 / 標識 / 毒性 / 動物プランクトン / カイアシ類 / ミジンコ類
研究実績の概要

量子ドット(QDs)の体内蓄積と毒性について、前年度に検討したカイアシ類につづき、今年度では、汽水産ミジンコDiaphanosoma celebensisとワムシBrachionus plicatilisに与える影響を検討した。培養条件は、水温25℃、塩分22、全暗とした。
ミジンコに対しては、QDs濃度を0(対照), 8, 16, 40nMとし、無給餌下で観察を行った。水量5mL中に雌親5個体を収容し、曝露実験を行った。0, 8, 16, 40nM曝露下での親個体の生残はそれぞれ、1日後が100,100,60,20%、2日後では100, 100, 0, 0 %であった。また、0, 8, 16, 40 nM曝露下で、親1個体あたりが生じた幼生の個体数は、それぞれ1日後に0.8, 0.8, 0.4, 0.4で、2日後では0.4, 0.2, 0, 0であった。以上より、16nM以上でQDsの顕著な毒性が確認された。蛍光顕微鏡観察を通じて、最大濃度の40 nM曝露下で1日後に生き残った親個体の消化管内に量子ドットが観察されたが、他の実験区では消化管内に確認されず、体内への蓄積と幼生への伝播は全条件下で観察されなかった。
ワムシについては、耐久卵をインキュベートして孵化後1時間以内のワムシ(幹母虫)を40nMのQDsに曝露した。微細藻類Nannochloropsis oculataを700万細胞/mLで給餌し、随時新鮮な培養海水に交換して胃内容物(微細藻類)を排出させた後、親ワムシ(幹母虫)とそれらが生じた仔ワムシを蛍光顕微鏡で観察した。その結果、ふ化直後に曝露後1時間経過した幹母虫の全個体がQDsを蓄積していたが、24時間後にはそれらが消失した。これらから生じた次世代の仔ワムシの体内からもQDsは検出されなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予測していたQDsの体内への取り込みと卵細胞を通じた次世代への伝播が観察されたのはカイアシ類のみで、ワムシとミジンコでは予測に反する観察結果が得られているが、当初の予定通り、2年間で分類群の異なる3種の動物プランクトンについて実験を終了したことから、おおむね順調と判断した。

今後の研究の推進方策

当初の平成29年度の研究計画では、動物プランクトンを量子ドットで標識することにより、個体群の消長過程で、特に個体群が崩壊する際に影響を受ける世代やステージの解析に応用することを目的としていた。一方、個体群の指数関数的な増殖とその後の崩壊現象がふつうに観察されるワムシとミジンコでは量子ドットの体内蓄積や次世代への伝播がみられなかった。一方、カイアシ類では体内蓄積が起こり、第2世代まで伝播がみられたが、100%の個体で同様の現象が見られるわけでなく、第3世代にも伝わらなかった。以上より、次年度は、当初の計画を少し変更し、次の3点について研究を行う。
1)ワムシ、ミジンコ、カイアシ類を用いた研究を継続し、浸透圧を利用した体内への取り込みを検討する。すなわち、培養海水の塩分を22から4(両種が正常に生息しうる最低塩分)へ移行させ、量子ドットの体内取り込みを誘発できないか検討する。
2)量子ドットでカイアシ類を標識し、密度を変化させて0.1~20個体/mLに数段階設定)個体群培養を行い、培養密度によって産仔活動がどのように変化するか求める。成果が得られれば、微小動物プランクトンでは初めて得られる成果になる。
3)本研究で対象とした量子ドットのほかに、数種類の色素による標識実験をワムシを対象として行っており、両者を合わせた形で論文を作成し、投稿する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] 成均館大学校(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      成均館大学校
  • [備考] 水産増殖学研究室 萩原篤志

    • URL

      http://www2.fish.nagasaki-u.ac.jp/FISH/KYOUKAN/hagiwara/index.htm

URL: 

公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-22  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi