研究実績の概要 |
量子ドット(QDs)の体内蓄積と毒性について、前年度に検討したカイアシ類につづき、今年度では、汽水産ミジンコDiaphanosoma celebensisとワムシBrachionus plicatilisに与える影響を検討した。培養条件は、水温25℃、塩分22、全暗とした。 ミジンコに対しては、QDs濃度を0(対照), 8, 16, 40nMとし、無給餌下で観察を行った。水量5mL中に雌親5個体を収容し、曝露実験を行った。0, 8, 16, 40nM曝露下での親個体の生残はそれぞれ、1日後が100,100,60,20%、2日後では100, 100, 0, 0 %であった。また、0, 8, 16, 40 nM曝露下で、親1個体あたりが生じた幼生の個体数は、それぞれ1日後に0.8, 0.8, 0.4, 0.4で、2日後では0.4, 0.2, 0, 0であった。以上より、16nM以上でQDsの顕著な毒性が確認された。蛍光顕微鏡観察を通じて、最大濃度の40 nM曝露下で1日後に生き残った親個体の消化管内に量子ドットが観察されたが、他の実験区では消化管内に確認されず、体内への蓄積と幼生への伝播は全条件下で観察されなかった。 ワムシについては、耐久卵をインキュベートして孵化後1時間以内のワムシ(幹母虫)を40nMのQDsに曝露した。微細藻類Nannochloropsis oculataを700万細胞/mLで給餌し、随時新鮮な培養海水に交換して胃内容物(微細藻類)を排出させた後、親ワムシ(幹母虫)とそれらが生じた仔ワムシを蛍光顕微鏡で観察した。その結果、ふ化直後に曝露後1時間経過した幹母虫の全個体がQDsを蓄積していたが、24時間後にはそれらが消失した。これらから生じた次世代の仔ワムシの体内からもQDsは検出されなかった。
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