魚類の安定同位体比分析では、体表粘液を分析する新手法を提案することが申請研究の大きな目標であった。計画立案時の到達目標としていた、①複数魚種での濃縮係数と置換速度を示すこと、②従来法(筋肉の分析)と比べて応答が早いことを示すこと、③非致死的で反復可能な粘液採取手法を確立すること、の3点は到達された。また、置換速度の2つの決定要因である成長速度と代謝回転速度が相関することも示された。これによって、野外での測定が難しい代謝回転速度を成長速度から予測することで、同位体比の置換速度が予測できる可能性が示された。粘液の同位体分析は、早い応答または非致死的な分析が求められる状況下で有効な代替手段である。
|