我が国で急務とされる激減したアサリ資源の回復を実現するためには、種苗生産の安定化や低コスト化に加え、高機能餌料の安定供給技術の開発が必須である。これまでに筆者らは、アルギン酸(褐藻類などに含有する酸性多糖)がアサリの成長促進成分であることを見出した。本研究では、安価で大量生産可能な微細藻類ナンノクロロプシスとアルギン酸の併用給餌効果を検証するとともに、消化管内に存在する桿晶体の細菌叢を解析することにより、アルギン酸添加による成長促進機序の解明を目的とした。 飼育水量が20Lの給餌試験により、微細藻類とアルギン酸の併用効果を検証した。20日間の給餌を行った結果、ナンノクロロプシスにアルギン酸分解物を添加した給餌区において、既存の餌料種であるキートセロスと同等もしくは若干上回るアサリ稚貝に対する餌料効果が認められた。しかし、ナンノクロロプシスの単独給餌区では、キートセロスより有意に成長が低下した。以上より、ナンノクロロプシスとアルギン酸の併用給餌は、アサリ種苗生産における有効な給餌法となり得ることが示唆された。 一方、殻長2.3mm程度のアサリを収容したゲージを現場海域に14日間設置し、試験開始および終了日に桿晶体を摘出して次世代シークエンサーによる細菌叢解析を実施した。同様に、殻長2.3mm程度のアサリを用いて室内にて給餌試験を行い、キートセロスおよびナンノクロロプシス単独給餌区に加え、両種とアルギン酸の併用給餌区を設定して給餌試験を行った。14日間の給餌後、桿晶体を摘出して次世代シークエンサーによる細菌叢解析を実施した。細菌叢解析の結果、アサリ桿晶体の細菌叢は、現場海域で飼育した場合と室内で飼育した場合で大きく異なっていた。しかし、室内給餌試験における餌料生物種やアルギン酸添加の有無による明瞭な細菌叢の変化は認められなかった。
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