本研究は、水産複合脂質を膜材としたリポソーム(サブミクロン小胞のこと)を調製し、M細胞を発現させた小腸上皮細胞モデルを用いて、リポソーム膜の複合脂質組成がリポソームの透過性および上皮細胞内への取り込み性にどのような影響を与えるのかについて調べたものである。先ず、エンドサイトーシス阻害剤である、EIPA またはChlorpromazineを使用することにより、それぞれ、マクロピノサイトーシス、クラスリン依存性エンドサイトーシスを阻害した状態で各種リポソームの透過試験を行った。その結果、PC-MLV(ホスファチジルコリンのマルチラメラベシクル)はマクロピノサイトーシスを介して透過すること、PC-SUV(ホスファチジルコリンのスモールユニラメラベシクル)はマクロピノサイトーシスとクラスリン依存性エンドサイトーシスを介して透過すること、PC/SQDG(スルホキノボシルジアシルグリセロール)-SUVは、クラスリン依存性エンドサイトーシスを介して透過することが示唆された。これに対し、PC/PS(ホスファチジルセリン)-MLV、PC/SQDG-MLV、PS-SUVは何れの阻害剤を使用した場合も、透過率の低下が認められなかったことから、ファーゴサイトーシスを介して透過することが推察された。次いで、細胞内取り込み試験を行った。何れの阻害剤を使用した場合も、コントロールと比較して、取り込み率の低下が認められ、特にEIPAを使用した場合には大きな低下が見られたことから、PC-SUVは主にマクロピノサイトーシスを介し細胞内に取り込まれ、一部はクラスリン依存性エンドサイトーシスで取り込まれることが示された。 以上、本研究により、脂質クラスの選択と組成比を制御することによって、リポソームの取り込み性が大きく変化することが明らかになった。
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