研究課題
1)ウイルスゲノムにおけるプロモーター領域の推定とその分離連携研究者である瀬戸内海区水産研究所の外丸裕司博士より分与頂いたウイルス粒子を用い、これらから Tomaru et al. (2008)の方法に従ってゲノム核酸を抽出した。それらのゲノム配列を決定した後、ORF Finder (米国国立生物工学情報センター:NCBI)を用いて遺伝子と思われる領域を推定した。プロモーター領域と推定されるその上流部位をPCR法により増幅し、この分離に成功した。2)ウイルスプロモーターを組み込んだ形質転換ベクターの構築Gatewaysテクノロジー(Life Technologies社製)を用いることにより、前項の1)により分離したウイルスプロモーターを、抗生物質耐性遺伝子(Sh ble)あるいはレポーター遺伝子である改変型緑色蛍光タンパク質遺伝子(egfp)と共に、プラスミドに組み込むことにより、形質転換ベクターの構築に成功した。なお、対照として珪藻内在性プロモーター、植物ウイルス由来プロモーターおよび動物ウイルス由来プロモーターを用い、同様に形質転換ベクターを構築した。3)エレクトロポーレーション法による珪藻の形質転換海産珪藻Phaeodactylum tricornutumに対して、Miyahara et al. (2013) により報告されたエレクトロポーレーション法に従って、2)にて調製した形質転換ベクターをそれぞれ用いて、遺伝子導入装置NEPA21(ネッパジーン社製)により遺伝子導入を試みた。その結果、新奇ウイルスプロモーターを用いた場合、その形質転換に成功したが、その際に得られた形質転換効率は低かった (5 <colonies /10 8乗cells)。
2: おおむね順調に進展している
1)ウイルスゲノムにおけるプロモーター領域の推定とその分離については、当初の計画通りに、ウイルスゲノム中の遺伝子と思われる領域を推定した。さらにそれらの、プロモーターと推定される領域の分離に成功した。2)ウイルスプロモーターを組み込んだ形質転換ベクターの構築については、当初の計画通りに、前項の1)により分離したウイルスプロモーターを、抗生物質耐性遺伝子(Sh ble)あるいはレポーター遺伝子である改変型緑色蛍光タンパク質遺伝子(egfp)と共に、プラスミドに組み込むことにより、形質転換ベクターの構築に成功した。3)エレクトロ3)ポーレーション法による珪藻の形質転換については、2)にて調製した形質転換ベクターをそれぞれ用いて、遺伝子導入装置NEPA21(ネッパジーン社製)により遺伝子導入を試みた。その結果、その形質転換に成功したが、その際に得られた形質転換効率は低かったため、今後のその導入条件(電圧、パルス幅、パルス間隔、パルス回数、減衰率)を検討し、より高効率な形質転換系を確立する。
1)エレクトロポーレーション法による珪藻の形質転換については、遺伝子導入装置NEPA21(ネッパジーン社製)を用いて、その導入条件(電圧、パルス幅、パルス間隔、パルス回数、減衰率)を検討し、より高効率な形質転換系を確立し、多数の形質転換体を取得する。2) qRT-PCR法によるウイルスプロモーターの転写誘導活性の評価については、まずウイルスプロモーターを緑色蛍光タンパク質遺伝子(egfp)に連結したプラスミドを導入した藻体を液体培地にて培養し、これらを集藻した後、常法によりRNAを抽出する。これを鋳型として、qRT-PCR法によりegfpとSh bleの発現量をそれぞれ求める。前者の量を後者の量で除することによりそれぞれのプロモーターの相対活性を評価する。3)培地に含まれる栄養塩類や、藻体の増殖段階および日周期がプロモーターの発現に与える影響についてqRT-PCR法により評価する。得られた結果に基づき、各プロモーターの発現誘導活性の安定性を評価する。4)プロモーターの適用範囲については、得られたウイルスプロモーターが中心目珪藻および羽状目珪藻における代表的な種に適用可能か評価する。さらに、 フローサイトメーターにより、各プロモーターを組み込んだベクターを導入した形質転換体において、緑色蛍光タンパク質が安定的かつ高レベルで発現しているか評価する。
交付申請書に記載していたマルチパルス型エレクトロポーレーションの機器であるスーパーエレクトロポレーター(NEPA21S)については、学内で使用が可能となったため、本予算によるこの購入を中止して、これに必要な消耗品費を増額・計上した。
スーパーエレクトロポレーターに係る備品費と後者の消耗品費の差額については、これを平成28年度に繰り越しし、これを当該年度の前半において本機器に係る消耗品費ならびにその他の消耗品費にあてることにより研究の実を挙げたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Marine Genomics
巻: 25 ページ: 49-56
10.1016/j.margen.2015.12.004
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 18708
10.1038/srep18708