研究課題/領域番号 |
15K14805
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂口 圭史 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50396280)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | カタクチイワシ / ゲノム編集 / ノックアウト / 遺伝子導入 / 外来遺伝子発現 / トランスジェニック魚 |
研究実績の概要 |
本研究では、淡水魚ゼブラフィッシュおよびメダカに次ぐ第三の魚類由来モデル生物として海産魚カタクチイワシに着目し、本種の遺伝情報の整備、外来遺伝子発現系の構築、およびゲノム編集による遺伝子破壊法など網羅的な技術開発を行うことで、モデル生物としての本種の有効性を確立することを目的としている。平成27年度においては、以下3項目の研究を遂行した。 1) 遺伝情報の整備 - ヨーロッパ産カタクチイワシRNA-seqの生データを利用して、ローカル環境でblast検索が可能なcDNAデータベースを作成し、以降の実験進捗に寄与する日本産カタクチイワシ遺伝情報の暫定的な基盤を構築した。 2) 外来遺伝子発現系の構築 - GFP遺伝子の発現ベクターを本種の受精卵に導入したところ、導入胚の一部のみにGFP蛍光が観察された。そこで、高効率な外来遺伝子導入法の確立を目指して、メダカゲノムから発見されたトランスポゾンTol2の系を利用した遺伝子導入法を検討した。その結果、本法はカタクチイワシにおいても適用可能であることが分かった。 3) ゲノム編集による遺伝子破壊法の確立 - ゲノム編集技術TALENを用いて、骨格筋増殖抑制因子ミオスタチン (MSTN) 遺伝子の破壊を試みた。続いて、90%以上の高い効率でindel変異を有するF0胚が得られたために、F0ファウンダー同士の交配を行った。その結果、得られたF1世代の2割強の個体は、MSTN遺伝子の両アリル共にフレームシフト変異を起こしていた。すなわち、通常より1世代早いF1世代において、MSTN遺伝子ノックアウト個体の作出に成功したことが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に基づき1) 遺伝情報の整備、2) 外来遺伝子発現系の構築、および3) ゲノム編集による遺伝子破壊法の確立 の3項目から成る研究を遂行し、それぞれにおいて前進的な結果を得ることができた。 尚、各項目を検分すると、進捗に若干の遅れが見られるもの(項目1)、実験計画の順番が前後したもの(項目2)、および計画より進展がみられたもの(項目3)に分けられるが、全般的な研究進捗としては順調であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
1) 遺伝情報の整備 - 受精直後~ふ化直後の各段階におけるRNA-seqを行い、これらの結果を混合アセンブリした日本産カタクチイワシcDNAデータベースを構築するとともに、胚発生期特異的に発現する候補遺伝子群を同定する。 2) 外来遺伝子発現系の構築 - カタクチイワシ由来house keeping遺伝子プロモーターを利用した外来遺伝子発現系を構築する。 3) ゲノム編集による遺伝子破壊法の確立 - MSTN遺伝子ノックアウト個体の系統を確立するとともに、その表現型を詳細に解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、平成27年度にカタクチイワシのRNA-seq解析を行う予定として予算を計上していたが、実験進捗状況の変化によって当該解析を行わなかったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にRNA-seq解析を行う予定である。
|