今日、環境中の任意の微生物の生態を解明する方法として、培養法に依存しない分子生物学的手法を用いた解析技術の進展がめざましい。このような解析技術の中でも研究代表者は、環境中に生息する任意の微生物を視覚的に検出するfluorescence in situ hybridization (FISH) 法の高感度化や技術的課題の解決に取り組み、その適用範囲を広げてきた。FISH法の技術課題の一つとして生菌を観察できないことが挙げられる。FISH法はサンプル前処理段階でサンプルを固定する工程が必須であり、この際に微生物は死滅してしまう。 こうした課題を解決する方法として、研究代表者は、微生物の細胞外層のタンパク質などを標的分子として視覚化する技術を用いれば、生菌状態でも任意の微生物を検出できるのではないかと考えた。このコンセプトを可能にする一つの方法として研究代表者はアプタマーに注目していた。アプタマーは、数十塩基からなる一本鎖の核酸であり、自らが高次構造を形成することである特定の物質と高い親和性をもって結合することができる機能性核酸である。このアプタマーを用いて微生物を視覚的に検出する技術の開発を進めてきた。本研究では、E. coliを検出するアプタマーに我々の研究チームが開発した高感度FISH法であるin situ DNA-hybridization chain reaction (HCR) 法を応用することで蛍光を高感度化しかつ均一化することを目的とした。結果、従来法の蛍光強度を超える感度が得られ、また得られる蛍光は菌体全体を覆うような均一なものであった。
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