研究課題/領域番号 |
15K14808
|
研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
安藤 忠 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, 主幹研究員 (20373467)
|
研究分担者 |
藤原 篤志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, グループ長 (30443352)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 腸内細菌 / トリプシン / マダイ |
研究実績の概要 |
毎日給餌しているマダイの幼魚から胃、幽門垂、腸中部、腸後部、皮膚を摘出しDNAを抽出した。このDNAについてバクテリアの16S rRNAに特異的なプライマーを使用してPCRを実施したところ、DNAの増幅は、胃、幽門垂、皮膚に認められず、腸中部にごく弱く、腸後部に非常に強く認められた。このことは、マダイの幼魚の消化管においてバクテリアは腸後部に集中して存在することを示している。次にマダイ幼魚の消化管を幽門垂、腸前部、腸中部、腸後部に分割し、腸後部をさらに4分割して(計7部位)、消化酵素の活性をそれぞれの部位で測定した。その結果、幽門垂が主な分泌器官と考えられるトリプシン、キモトリプシン、エンテロペプチダーゼは腸後部の最前部に活性が集中した。さらにプロテアソーム酵素の一つ、ペプチジルグルタミルペプチド加水分解酵素の活性を測定したところ、腸後部全域にのみ活性が認められた。これらのことは、腸では消化酵素の分泌箇所と消化酵素が活性化されて機能が発揮される箇所が異なることを示唆している。すなわち、トリプシンとキモトリプシンは分泌後に腸後部で活性化し、タンパク質性餌料の消化に関わる。そして消化物の一部は腸後部での吸収後にプロテアソームの細胞内消化を経る可能性がある。以上のようにマダイにおいて腸後部は消化吸収が特に活発な箇所であり、このような箇所に腸内細菌が集中して存在することは、消化吸収と腸内細菌に特別な相互作用が腸後部においてあることを示唆する。したがって、マダイの腸内細菌の機能性解析については腸後部を中心に実施することが重要と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、様々な条件下でのマダイの腸内細菌叢を比較する予定であったが、その前に肉眼では一様かつ連続的構造をとるように見える腸について部位ごとの機能解析を実施した。その結果、摂餌物が消化を終了し排出を待機しているのみと予想した腸の後部が消化機能上、最も重要であることが示唆される結果を得た。この成果は、今後、本研究において着目すべき消化管の部位を明確化させた上で重要である。進捗が遅れているが、結果的により正確な成果を得る方向に向かうことが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
腸からほとんど吸収されないバンコマイシンを使用して腸内細菌の制御を試みる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の納品金額が発注時の価格よりも安価だったため予想以上に節約できたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度繰り越しとして消耗品子乳に使用する予定。
|