本研究は農作業に係る紫外線のエビデンス把握手法を確立し,農業環境・情報工学と眼科学を融合した新たな紫外線対策装具の開発を目的としている。29年度は日本の環境下での農作業中の紫外線被曝量を把握するため,ウェアラブルなセンサを農繁期の作業者に装着して紫外線被曝量のモニタリングを行った。今回の調査では紫外線曝露量が許容基準値を超えたのは、計測日全体の約6割であった。計測日の中には、雨天で屋外での作業を行うことができなかった日や屋内での事務作業のみ行ったという日も含まれており、計測日全体の約6割とはいえ、屋外で農作業を行った日の多くは許容基準値を上回ったといえる。被験者への聞き込みを行ったところ、頭部の紫外線の防護手法として、作業中は帽子、長袖、長ズボンの作業服を着用、屋外作業日は日焼け止めを塗るなどの方法をとっており、頭部及び顔部、眼部、身体全体への太陽紫外線曝露は軽減され、熱中症や日焼けの防止にもつながっていたのではないかと考える。しかし、夏季の初めなどは強い日差しに身体が慣れていないため、頭痛や疲労を感じることが多かったという声があり、より注意して休憩、水分補給を行うことが重要であると改めて感じた。その他の部位への防護手法として、眼部の防護手法としてサングラスの装着が挙げられるが、サングラスを装着したほうが良いと分かっていても、視界が狭まる感覚や、装着した時の違和感がどうしても気になり、着用せずに作業したという者もいた。農業と同じく屋外作業時間が多く太陽紫外線曝露量の多い職業である漁業でも、太陽紫外線に対する意識やサングラス装着率はそれほど高くなく、特に高齢になればなるほど作業がし難いといった理由から、作業中のサングラス装着に対する抵抗も大きい(庄山 2010)。作業に支障をきたさないサングラスが求められているとともに、紫外線曝露が人体に与える影響についての周知が必要である。
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