研究課題/領域番号 |
15K14828
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中川 智行 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70318179)
|
研究分担者 |
中野 浩平 岐阜大学, 大学院連合農学研究科, 教授 (20303513)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | メチロバクテリウム属細菌 / 青果物 |
研究実績の概要 |
昨年度、市販のホウレン草のメチロバクテリウム属細菌群の菌叢解析により主要な3種のメチロバクテリウム属細菌を同定した。本年度は、これらメチロバクテリウム属細菌および菌株の培養液を青果物に直接塗布することによるホウレン草の鮮度保持効果について観察した。その結果、予想に反し、メチロバクテリウム属細菌またはその培養液を塗布したホウレン草の方が、鮮度低下が先行して進むことが明らかになった。このことは、メチロバクテリウム属細菌が青果物葉上でPQQおよび植物ホルモン様物質を生産し、その能力を発揮することでポストハーベストの青果物自身の代謝を亢進し、ホウレン草の鮮度低下を促進している可能性が示唆された。つまり、本研究の初期に想定していたメチロバクテリウム属細菌およびPQQによる鮮度保持に関して逆効果を持つ可能性を示している。 また、メチロバクテリウム属細菌では、Caと希土類元素がメタノール代謝の初段階酵素MDHの鍵因子として、その代謝の切り替えを行っていることが知られている。今回の主要ターゲットであるPQQもまたMDHの補因子であることから、メチロバクテリウム属細菌におけるCaおよび複数の希土類元素によるPQQ生産性の違いについて観察した。その結果、Caでは顕著なPQQ生産が観察されたが、希土類元素ではPQQの生産性が低下した。このことは、青果物のCaを制限した方がPQQの鮮度低下を押さえることができる可能性を示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初期の本研究の設定通り、研究計画は進んでいるものの、メチロバクテリウム属細菌およびその培養上清の青果物に対する機能が予想に反し、鮮度低下に寄与する可能性を示すデータを得た。これにより、本データの裏付けと鮮度保持技術の開発に向けた方向性を修正に時間を要しているため、若干の遅れが出ている。 来年度は、これまでのデータを踏まえ、メチロバクテリウム属細菌およびPQQの鮮度保持への関与を明らかにし、それらを排除する技術の開発が鮮度保持に対してどのように働くか、これまでの計画に加えて同時並行で進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
1. C1微生物およびPQQによる青果物の鮮度保持に対する評価:青果物上のC1微生物のポピュレーションを調整(増加および減少させる)による青果物の鮮度への影響を観察する。具体的には、青果物上に様々な生菌数のC1微生物を散布(または抗生物質にて減少させる)し、共生細菌数と青果物鮮度パラメーターとの関係性を評価する。 2. C1微生物のマイクロフローラへの影響:C1微生物の植物共生は、その他の微生物の生息を制限または活性化することが考えられ、これにより腐敗菌等の生菌数を低く押さえる(もしくは増大)ことができるものと考えられる。そこで、青果物上に様々な生菌数のC1微生物を散布し、収穫後青果物上のマイクロフローラの変化を追跡する。これにより、PQQの生産能のみならず、C1微生物による青果物上のマイクロフローラの制御の可能性を示していく。青果物上のマイクロフローラは一般生菌数および次世代シーケンサーによる網羅的解析にて評価し、同定することでC1微生物によるマイクロフローラの制御について評価していく。 3. C1微生物を中心とした新たな青果物の鮮度保持技術の提案:本研究成果を総括して、C1微生物とPQQを中心とした新たな青果物の鮮度保持技術を提案する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
得られたデータにより、若干方向性の修正が必要となったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
あらたにホウレン草葉上の菌叢解析等を追加で行う。
|