本年度は、市販のホウレンソウを青果物のモデル材料として選抜し、ホウレンソウの流通状態を想定した状態(20°C)における葉上の微生物相の推移をメタゲノム解析にて観察した。その結果、20°C保存3日目には、Erwinia属細菌が大部分を占め、サンプルによっては50%を超えるものもあった。その主要な種はE. mallotivoraであり、全体の3割程度を占めた。続いてPseudomonas属細菌、Sphingobacterium属細菌、Stenotrophomonas属細菌が主要な構成細菌叢であった。一方、20°C保存7日目には、Pseudomonas属細菌が優勢属になっており、サンプルによってはPseudomonas moraviensisが半数を占めるまでに菌叢が変化していた。 このように市販のホウレン草の葉上の細菌群は保蔵環境下で劇的に変化していた。また、昨年までの研究によりメチロバクテリウム属細菌群に関しても保蔵環境下でその菌叢が変化し、最終的に大きく3グループ(M. mesophilicumグループ、M. fujisawaenseグループ、M. extorquensグループ)が支配的になることを明らかとしている。今回の研究では、ホウレン草葉上の細菌群の菌叢変化とメチロバクテリウム族細菌群の菌叢変化、さらには主題であるホウレン草の鮮度保持との関連性を詳細に証明することはできなかったが、メチロバクテリウム属細菌が生育過程中の作物の成長に大きな影響を及ぼすことがすでに報告されていることから、青果物のポストハーべスト技術開発においても、メチロバクテリウム属細菌の制御が鍵である可能性を示すことができた。
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