研究実績の概要 |
適度な水分条件と減圧条件で、土の熱伝導率は金属と同程度にまで劇的に増大する。この熱伝導率の劇的な増加は、個々の間隙がヒートパイプとして機能し、土全体にひとつながりのヒートパイプ現象を引き起こすことに起因する。本研究では、土が大きな熱輸送を行える新素材となりえることに着目し、地中熱利用技術としての可能性を探ることとした。具体的には、(1)土を利用した熱輸送装置を製作すること(2)その熱輸送性能を明らかにすることを目的とした。 熱輸送装置に用いた土は、これまでの研究で最大の熱伝導率を示した赤黄色土(固相率0.35,体積含水率0.25)とした。乾燥土と水をよく混合してアクリルパイプ(直径5cm、長さ20cm)に充填し、パイプ両端をアルミ丸板(直径6cm、厚み2mm)で接着固定し、真空ポンプとレギュレータでパイプ内を圧力調整した。この熱輸送装置を、夏・冬を想定した温室模型のなかに鉛直方向に埋設し、気温と地中温度を一定条件に保ち実験を行った。夏を想定した温室模型では、気温27℃と40℃、冬は気温3℃とし、地中温度は夏も冬も15℃とした。大気圧条件と減圧条件とでの熱輸送装置の温度分布を計測し、地中熱利用技術としての本装置の可能性を探った。 大気圧下において、装置上面温度は気温とほぼ同じ温度を保つ。この上面温度が、減圧下で大きく変化することを明らかにした。夏を想定した気温27℃の場合、上面温度は20℃にまで低下し一定温度を保つことが明らかとなった。気温40℃の場合、上面温度は25℃まで大きく低下し、気温3℃の場合、上面温度は8℃に上昇した。地表-地中間の熱交換が、減圧下でスムーズに行われたことを示している。地中熱を利用した冷却・加温技術につながる可能性を示すことができた。今後の課題としては、真空密閉技術の確立と大型化した装置による実証試験が挙げられる。
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